金玉がWherever

 チーズのように柔らかく、ゴムのように伸び、金玉は宇宙を覆った。



 ちょうどこの図が、宇宙を包容する金玉の外殻を指し示しているように。



 地球では、金玉湯葉のシワシワカーテンが、レース状に空を覆っていた。

 天を見上げ、人々は叫んだ。

「ホップ、ステップ、ほーいほいほいほい。夜が明けたら、小生の金玉のシワまでトゲトゲでござるよ、にーーーーーーーん」



「貴様はでけえ猿なんだよ」

 動物園のでけえ猿が、全身デニムのビスマルクに説教をされている。

「貴様はでけえ猿なんだよ」

 でけえ猿は、金玉も......にーら笑にーら笑にーら笑。言わずもがなであろう。

「貴様はでけえ猿なんだよ」

 貴様はでけえ猿なんだよ。


 ◇


 カントリーにブレスウィンドを感じた。空には等高線のようなシワシワの雲。深淵に魅せられる肉のタヌキ。


「いーんいんいん!!」



 空の金玉にまつわる物語を書き尽くすことが私の使命だ。金玉は宇宙を覆った。その前提は、科学的に十分に説明された事象だった。そして、避けられない出来事だった。

 だから、この物語のそういう諸々の前提を打ち砕くことは、少なくとも私にはできなかった。

 金玉のシワが高度な網目を築くように、物語にも網羅性が必要だと思った。私には使命があった。

 宇宙を覆う金玉にまつわる全ての影響を書ききることだ。それは尋常ではない労力を要する。しかし、それは私が物語を始めた以上、避けてはならぬことなのだ。



『肉のタヌキが勃起した』

 少なくとも普遍的な事象を私は書いた。そして、この文章を書いたことによって、少なくとも金玉覆う宇宙のある側面については書くことができた。ほんのごく僅かな、出来心。



『オーマイおっぱい』

 昔、オーマイパスタのCMをよく口ずさんでいた。私にとってオーマイパスタはすごく普遍的な食べ物で、それ故にこの文章もまた、私には普遍的にしか見えないのだ。

 オーマイパスタを食ったことないやつなんて、この宇宙に、いるのかいな



『電気うなぎをファックするぞ!』

 私の父親は電気うなぎをファックして仏になった。そして生まれたのが私だ。

 私は電気うなぎとウサギのあいの子だ。クルセイダーたこ焼きだ。

 私はこの世で一番普遍的な動物なのだ。



『どっひゃー!!アタチのおまんこから電撃の嵐が!!』

 私の性器には秘密があった。どんな男であれ、許可なく私のおまんこに触れようとするものは、電撃で即座に焼死体と化した。天然のスタンガン。私は自分の性器に、誇りを持っている。うきき。



『てめえ、稲荷寿司食ってやがるのか。きよ笑きよ笑きよ笑』

 バイト先の店長は、私の昼食にいつもケチをつけていた。私がコンビニの稲荷寿司を毎日食っているのがおかしかったらしい。女の私が稲荷寿司を恥ずかしげもなく食べているのが気になるのだとか。店長にとって、稲荷寿司は陰嚢のメタファーでしかないのだという。そうか、ならばもう私は何も言うまい。彼がアワビを食っている時は、私は盛大に笑ってやろうと思う。きよ笑きよ笑きよ笑、と。

 店長はそのうち焼死体になった。うきき。



『見てみろよ俺のチンポ。今日は具沢山で、張りがたまんねえから』

 一時期遊んでいた男の一物は、電気うなぎだった。彼もまた、電気うなぎと何かのあいの子だったのだ。

 運命とは思わなかった。私にとって、他人のちんこが電気うなぎだろうが登竜門を超えた鯉だろうが、そんなのは本当に些末なことに過ぎなかったのだ。

 私は普通に、世界で一番特別な生き物なんだから。それもダントツで。

 この世界は私のためにあるのだ。このシワシワの空も、全ては、私が善く生きるための最適な環境でしかないのだ。だから私以外の男の一物が具沢山だとか、そんなのはどうでもいいんだ。具沢山でも、豆のような矮小さでも、心赴くままにおまんこするのだ。



『俺とコントみてえな喜劇的ファックをしよう。小生のちんぽーは、トゲトゲ海老フライである』

 電撃に耐性のある男やもめが、私をある日にファックした。行きずりの強権的ファックだった。男は自分の体に走る電撃ごと、私を肉の玩具おもちゃにしたのだ。

 私は特別な生き物だ。それだけは確かだ。



 私には普遍的な物語を書く使命があった。

 どれだけ不条理な世界でも、私は普遍性を書き終わるまでは筆を下ろすわけにはいかない。この不条理な世界で普遍的な物語を書けてこそ、私は特別であり続けられるからだ。

 だから私は、いつだって電撃おまんこを携えて、こういうのだ。


『オーマイおっぱい』

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