第20話 食客の充実とフリードリヒ私兵団(2) ~バイコーンとダークナイト~

 フリードリヒは、バイコーンとダークナイトを調達するため、オスクリタとともに、冥界を訪れていた。

 闇精霊のオスクリタは冥界に詳しいため、案内役である。


 冥界の入り口から少し入ったところで、突然後ろから声をかけられた。


「おまえらうちの縄張りで何してやがる!」


 振り返るとバイコーンに騎乗した少女が槍を構えてこちらを牽制けんせいしている。


 が、フリードリヒの目はある一点に釘付けになっていた。

 少女はとんでもない巨乳だったのだ。プドリスもたいがいだがこれはそれをはるかに超えている。


 巨乳を堪能したあと、冷静になって少女を観察すると褐色の肌に尖った耳をしている。


「あれはダークエルフなのか?」

「肯定」とオスクリタが答える。


「ここがダークエルフの縄張りと知っていたのか?」

「近道だから…主様なら…問題ない」

「おまえなあ…」


 少女がしびれを切らして割り込んでくる。


「なにを身内でくっちゃべっている。縄張りを侵した落とし前をどうつけるつもりだ」

「害意はなかったんだ。ここは見逃してくれないか?」


「何をやわなことを。男なら気概をみせろ!」

「では、どうすればいい?」


「あたしと勝負しろ」


 ──エルフと違って戦闘的ということか…。


「是非もない。勝負を受けよう」

「では、いくぞ」


 少女はいきなりバイコーンを突進させてきた。

 相手は騎馬のうえ武器はリーチの長い槍だ。徒歩かちで武器が剣のフリードリヒの方が不利である。


 ──とにかく、馬から引きずり落とすまでだ。


 フリードリヒは2度3度と突進をかわすと、次のタイミグをみはからって相手の槍を掴む。力比べとなるがプラーナで身体強化すると、一気に地面に引きずり落とした。


 こうなればもうフリードリヒが有利である。


 何合か打ち合うと、隙を見て槍の穂先を切り飛ばした。

 なおも相手が向かってくるので、首筋に剣を突き付け寸止めにした。


「あたしの負けだ…」

 気のせいかなんだか相手の顔が赤い。


「今日は村で歓迎する。着いてこい」


 ──ええっ。単に見逃してくれるんじゃなかったのか。


 ここはこれ以上事を荒立てたくなかったし、急ぎの旅でもなかったので、おとなしく言うことを聞くことにする。バイコーンの情報も聞けるかもしれないしね。


 村に着くとダークエルフ族は女性優位の社会だった。見かけるのはほとんど女性で、たまに見かける男性も奴隷のようにこき使われている。


 聞いたところによると、男は種馬のような扱いらしい。男の子供ができると奴隷か、弱いものは追放されるか殺されるということだ。ほとんどアマゾネスのようである。


 ダークエルフの女性は皆グラマラスではあったが、少女の巨乳はその中でも飛び抜けたものだったようだ。


 フリードリヒは族長のところに連れていかれると、少女が族長に報告する。


「今日、この男と勝負して負けました」

「そうかい。それはよかったね。しっかり種をもらうんだよ」


「それはどういうことで?」

「強い男が種を与えるのはダークエルフ族のしきたりだ。否やは許されない」


 どうやら男には選択権がないらしい。


 その夜。宴が開かれた。以前のケンタウロス族の時のような失敗がないように酒量はきちんとコントロールする。


 負かした少女がフリードリヒのところにやってきた。


「あたいはダニエラという。おまえ。名前は?」

「フリードリヒだ」


「その…今夜はよろしく頼む」


 そういうとダニエラはフリードリヒに酒を注いでくれた。


「これにはダークエルフ族秘伝の強壮剤が入っている。全部飲み干せ」

「…………わかった」


 強壮剤の効果は強烈だった。もう股間が破裂しそうなまでにパンパンになっている。


 その夜。ダークエルフ族のいうところの種付け行為をダニエラに行った。ダニエラは処女だったのでかなり気を使った。


 以前は本番行為を自重していたフリードリヒだったが、アフロディーテの一件以来、タガが外れてしまい、流されやすくなっている傾向がある。


 ──今回はしょうがなかった面があるが、少し反省だな。


 翌日。族長のところへ向かうとバイコーンの族長を紹介してもらえないか頼んでみた。


「お安いご用じゃ。ダニエラ。案内してやりなさい」

「承知しました」


 バイコーンの族長のところに行くと対応は邪険だった。


「人族がいったい何用だ?」

「実は眷属になっていただけないかと思いまして…」


「人族の眷属などあり得ない」

「私が勝負して勝ったらというのはどうです?」


「そのようなこと。万分の一もあり得ない」

「そういって実はおくしているのでは?」

 とフリードリヒは挑発してみる。


「そんなバカなはずはなかろう」

「では、勝負を受けていただけますね?」

「ふん。後悔するなよ」


 勝負はフリードリヒがバイコーンの族長を乗りこなせれば勝ち、振り落とされたりしたら負けということになった。西部劇でいうところのロデオだ。

 しかし、あぶみのない状態で乗りこなすのは難しい。そこでフリードリヒは念力サイコキネシスで体を固定するというズルをすることにする。


 フリードリヒが族長の背中に乗り首にしがみつくと勝負が始まった。

 族長はロデオよろしく激しく体を上下したり揺すったりするがフリードリヒは体に固定されて離れない。


 族長は粘りに粘り勝負は一時間にわたった。

 しかし、ついにあきらめたようだ。


わしの負けじゃ。お主何をした?」

「実は念力サイコキネシスというものを使わせてもらいました」

「それは普通の人族には使えない技じゃな」

「まあそうですね」


 こうしてバイコーンの族長はフリードリヒの眷属となった。

 一頭ずつ眷属にしていてはたいへんなので、族長を眷属にできたのは僥倖だった。

 ペガサスもできればこのパターンでいこう。


    ◆


 引き続きダークナイトを調達にいく。


 これにはなぜかダニエラが着いて来ると言いだした。ダークエルフは種をもらえばあとは無関係という感じだったのに、どういうつもりかよくわからないが、せっかくの好意なので受けることにする。


 ダークナイトにはこれを統括するキングダークナイトがおり、冥界に城を作って住んでいるということなので、ここへ向かう。


「オスクリタ。今度は近道でなくていいから、安全な道を行ってくれよ」

「了解」


 冥界はバイコーンに騎乗して移動した。もちろんあぶみはついている。これで人の足よりは相当に早く行ける。


 かなりの時間進むと城が見えてきた。なかなか本格的な城だ。


「あれが…キングの城」とオスクリタが言った。


 城に着くと門番のダークナイトが驚いた。


「これはオプスクーリタス様。なぜこんなところに?」

「キングに…会いにきた。通しなさい」


「あなた様はともかく。そこの人族とダークエルフは通すわけにはいきません」


 門番たちは、フリードリヒとダニエラに対して抜刀して剣を向けている。これに対してダニエラも迎え撃つ構えをとった。わかってはいたが戦闘的なやつだ。


 気配を察して城内の者もこちらに向かっているようだ。大勢の足音が聞こえる。


「この方は…私の主様。それでも…通さないつもり?」


 オスクリタからどす黒い殺気が立ち昇る。こいつこんなに怖いやつだったっけ?

 これにはダークナイトたちも少しひるんだようだ。


「それでも無理なものは無理なのです。ご容赦ください」


 どうする。無理やり押し通ることもできなくはないが、ここで事を荒立てては上手く事が運ばないおそれがある。

 そう思いながら、フリードリヒは千里眼クレヤボヤンスで城内を探る。


 見つけた。あそこが王の間だ。結界の類もなさそうだし、テレポーテーションで一気に行けそうだ。


「オスクリタ。王の間まで一気に行く」


「「「ええっ!」」」


 ダークナイトたちが驚いている目の前でフリードリヒたちの姿が消える。次の瞬間、王の間に姿を現した。


 突然現れた怪しい人影に衛兵たちは驚き、あわてて周りを取り囲むと剣を構える。


「控えなさい!」


 オスクリタは珍しく強い口調で言った。


「ここにいらっしゃるのは私の主様です」


 衛兵たちは、闇の上位精霊の突然の登場に驚き、とまどっている。


「皆の者。控えよ」


 キングの一括に衛兵たちは冷静さを取り戻し、剣を収めた。


「オプスクーリタス様。その者があなた様の主とは本当ですか」

「そう。私はオスクリタの名前をもらって眷属になった」


「なんと…」


 キングは絶句している。


「あなたも主様の眷属になりなさい」とオスクリタが厳しい口調で言う。


「そうおっしゃられましても…。人族ですぞ。そのようなこと聞いたことがございません」


 そこでフリードリヒが口をはさむ。


「それではあなた様と私が決闘をして、私が勝ったらということではどうです?」

「ううむ…」


「負けるのが怖いのですか?」

とフリードリヒは追い打ちをかける。


「なに!私が人族などに遅れをとることなどあり得ない。よかろう。決闘を受けよう」


 そこで場所を城の闘技場に移して決闘の運びとなった。


 両者が剣を構える。


 フリードリヒは間もなく14歳。身長も180cm近くに成長していたが、相手は2メートルをはるかに超える身長だ。体格差は否めない。


「では、いくぞ」


 キングが攻撃してくるが、最初はつばぜり合いで互いの実力を探りあう。


「ふん」


 キングは、バカにしたようにそう言うと、こちらの実力は見切ったとばかりに激しい攻撃に転じた。


 スピードもパワーも段違いだ。これではオリハルコン冒険者でも対抗できるか怪しい。


 フリードリヒは咄嗟とっさプラーナで身体強化を図るがそれでもギリギリだ。相手の攻撃が体をかすめ小さな傷をところどころ負ってしまった。


 ──ここはあれしかないか。


 フリードリヒは神力を使って狂戦士バーサク化する。

 これで一気に形勢は逆転した。


「こ、これは!」


 キングは信じられないといった感じで驚いている。


 やがてフリードリヒの一撃が決まり、キングの右腕を切り飛ばした。剣が右腕とともに床に転がる。


「まいり申した」


 フリードリヒはダークヒールで右腕を治そうとしたが、止められた。


「魔力が満ちれば自然に治りますゆえ、気遣いは無用です。しかし、そのわざ。あなたは神の血を引く方だったのですな」

「ああ。わたしの母はガイアだ」


「なんと!あの原初神のガイア様ですか。それでは我などがかなわないのも道理。これからは我らの力を存分に使ってくだされ」

「ああ。そうさせてもらう。これからはよろしく頼む」


 こうしてダークナイトたちがフリードリヒの眷属となり、ダークナイト軍団の編成の目途めどが立った。


    ◆


「ここまで来たら冥界の王ハデスに挨拶しておこうと思うが、場所はわかるか?」

 とオスクリタに聞いてみる。


「わかる。でも…地獄を通らないと…行けない」

「ということは、ケルベロスに通してもらう必要があるということか…」


 ケルベロスは、亡者が冥界から出ていかないよう見張っている番犬で、三つの頭を持ち首の周りには蛇が生え、尾も蛇という姿をしている。


「ダニエラはここまで付き合う必要はないぞ」


 そう言うとダニエラは恥ずかしそうに少しうつむいて思案したあと、「あたしが好きでやっていることだ。気にしないでくれ」と答えた。ダークエルフにしては変わったやつだ。


 3人はバイコーンに騎乗して地獄に向かった。


 地獄の門が見えてきた。

 亡者を見張っている地獄のケルベロスの後ろ姿が見える。姿は聞いていたとおりだが体が大きい。


 すると尾の蛇に気づかれたらしく、ケルベロスは振り返るといきなり襲ってきた。


 ──ええっ!亡者の番はいいのかよ。


 面倒なので、今度は最初から狂戦士バーサク化して戦う。


 尾の蛇を切り飛ばし、首の蛇も刈り取っていくがひるむ気配がない。


 首の一つを切り落とすが、まだあきらめない。

 ではもう一つ。


「ま、まいった。許してくだされ」

 首が残り一つとなったところで、ケルベロスはあわててそう言った。


 ──なんだ。しゃべれるんじゃないか。


「あなたほどの強者は久しぶりだ。ぜひ眷属にしてくだされ」

「そうはいうが、番犬の仕事はいいのか?」

「問題ござらん」


 どうやらケルベロスは神と同じようにアバターを飛ばす能力を持っているらしい。ということで、番犬をやりながらでも眷属として働けるようだ。


「名前はケルベロスで上書きというのはありか?いい名前が思いつかないのだか。」

「それも可能だ」

「じゃあそれでいこう」


 フリードリヒは魔力を持っていかれる感覚を覚える。強力な個体だけあってかなりの魔力量だ。


「私たちはハデス様に挨拶あいさつがしたいだけだ。通してくれるか?」

「もちろんでございます」


「その傷。治そうか?」

「かたじけない」


 フリードリヒはダークメガヒールでケルベロスを治すと切り落とした首や尾もすべてが再生した。


「おお!なんという力」


 ケルベロスは感動している。


 それを横目にフリードリヒたちは地獄の門を通過した。


 オスクリタの案内で地獄を通り抜けるとハデスの宮殿にたどり着いた。


 門番に告げる。


「ガイアの息子フリードリヒがハデス様のご機嫌うかがいに参った。お取次ぎ願いたい」

「しばし待たれよ」


 アポなし訪問なので追い返されるかとも思ったが、程なくして王の間まで通された。


 冥界の王ハデスとその妻ペルセポネがいる。

 冥界の王というが神なだけあってなかなかにハンサムではないか。ペルセポネの方も相当な美人だ。


「貴殿のことは冥界でも噂になっておるぞ。ぜひ会いたいと思っていたところだ」

「お初にお目にかかります。ガイアの息子フリードリヒ・エルデ・フォン・ツェーリンゲンと申します。ご挨拶あいさつが遅れ、大変申し訳ございません」


「なに。冥界くんだりまで挨拶あいさつに来るような酔狂な者などおらん。気にするな」

「それはかたじけのうございます」


「ところでケルベロスを眷属にしたようだが」

「申し訳ございません。どうしても通してくれなかったものですから…」


「それはまったくかまわない。それにしてもケルベロスを屈服させるとは何千年ぶりかのう」

「ヘラクレスの時以来かしら。でもあの時は私が助けてあげたから…。自力で倒したのはフリードリヒが初めてじゃないかしら」

 とペルセポネが答えた。


「ところで、そこにおるダークエルフは貴殿の何だ。冥界で見染めでもしたか?」


 ──見染めた?そりゃあ種付けはしたけど…。


「まあ。そのようなものでございます」

「あたしも妻にしてもらいたいと思っております」

 とダニエラが言った。


 ──えーっ!ダークエルフってそういう種族じゃないよね。


 と驚くフリードリヒだったが、顔に出ないように必死に耐える。


「オプスクーリタスも眷属にしているのだろう。貴殿は世界征服でもするつもりなのか?」

「それは滅相もございません」


「いや。それはそれで面白いと思うがな。冥界の人口も増えそうだし」


 ──いやいや。変なことけしかけないでくださいよ。


 その夜。歓迎の宴が開かれた。

 冥界には客人が滅多に来ないらしく、盛り上がり方が半端なかった。


 宴会の時、ダニエラがフリードリヒの腕にしがみついてきた。腕に当たる巨乳の感触に股間が反応しそうになるのを必死に耐える。


 ダニエラが口を開いた。


「フリードリヒ様。地上へお供させてくれない」

「ここまで着いてきたのは、それが言いたかったのか?」


「そうよ」

食客しょっかくということなら、受け入れる余地はあるが、妻は難しいぞ」


「フリードリヒ様のそばにいられれば何でもかまわないわ」

「ならそうしよう」


    ◆


 冥界の帰り。ダークエルフの村に立ち寄った。

 族長にダニエラを連れていく話をする。


「ダニエラ。本当にいいのかい。地上では闇の者は迫害されていると聞くが…」

「私の仲間には闇の者も多くいますし、何かあれば私が守ります。それに人族でダークエルフを見たことのある者はいませんから、ちょっと色黒なエルフとでも言ってごまかせますよ」

 とフリードリヒが答える。


 ダニエラは、その横で赤くなってうつむいている。


「子ができたらその娘だけでも戻してくれるとありがたいんだがねえ」

「それはそうなってから考えます」とダニエラは答えた。


 それから地上に戻り、ダニエラを食客館へ連れていくとカロリーナに紹介した。


「バイコーンに騎乗できるのは頼もしいわね。これからいろいろ教えてもらえるかしら」

「もちろんです」


    ◆


 私はネライダ。


 今日、主様が新しい食客しょっかくの方を連れて冥界から戻ってきました。


 ダークエルフの方で、とっても美人でスタイルが良くって、とにかく巨乳です。それに比べて私はもうすぐ14歳になろうとしているのに胸の成長はいまいちで…。


 もーっ!男の人ってなんであんなにおっぱい大好きなのでしょう。


 主様の従者をやってもう4年が経とうとしていますが、何の進展もありません。


 やっぱり胸なの。それが原因なのかしら…。

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