◇21.名目だけでもカイトさんのお嫁さんなんですけど。(リリア視点)
私とカイトさんがダークエルフの村から戻って、一週間が経ちました。
まるで何事もなかったかのように、元通りの日常です。
私としては、村でのことも含めて毎日が刺激でいっぱいなのですが、それでもどこか穏やかさを感じてしまうのは、カイトさんが傍にいてくれるからだと思っています。
カイトさんはいつも飄々としているようで、その実冷静に周りを見ておられます。
だから、彼と一緒だと安心して、少しだけ気が緩んでしまいます。
ダークエルフの村でも……また私は助けられてしまいました。
でも、今度は私をかばったせいで、カイトさんは大怪我をして……。
私はただの女の子ではないのだから、カイトさんの足手まといになったり、ましてや私のせいで傷つくなんてことがあってはいけないんです。
たとえできそこないでも、竜なんですから。
彼の足りない部分を補って、彼を助けたい。この人と肩を並べて歩いていけるようになりたい。
最近はずっとそんなことを考えて、毎日を過ごしています。
それはともかくとして、ダークエルフとのトラブルのおかげか、私たちの関係にも進展がありました。
なんと、驚くべきことに……私とカイトさんは今後本当に夫婦としてやっていくのだそうです!
もちろん、『対外的にそう見えるように』という、仮の夫婦なのですが……。
嬉しいのは、私たちがそうなることについて、カイトさんが嫌そうな顔をなさらなかったこと。
彼はこちらを気遣って、「本当にいいのか?」と、帰ってからも何度も私に確認します。
でも、ダメなわけないじゃないですか!
だって、外でちゃんと言えるんですよ? 「私たちは夫婦です」って。
「こんなおっさんが」なんてカイトさんはいつも謙遜しますけど、私だってもう結婚できる歳で、お互いに遠慮する必要なんてどこにもないんですから。
これはもう、彼にぐっと近づくチャンスなのです。
順番は逆かもしれませんけど、夫婦ということであちこちお出かけしたり、皆さんからそのように扱ってもらったりして……こう、外堀を埋めていく感じで……やっちゃえばいいんですよね?
それで、できることなら、その、き、既成事実的な、ものを……。
あああっ、今のは無し、無しです! まだ早いですから!
……まあ、でも。そんな感じで状況が色々と進んだことも考えると、ダークエルフの人たちにさらわれたのも、ある意味良かったのかなって思います。
私が竜だからって、まるで神様みたいに敬われちゃいましたけど。
故郷にいた頃はほとんどお城から出たことがなかったので、自分たちがどう思われているかなんてまるで知りませんでした。
ダークエルフの人達にとって、竜人族は上位存在……? とかいうのらしいです。
竜の姿を持っている以外は、普通の人と同じだと思うんですけどね。
あんまり頭を下げられても、恐縮しちゃいます。
ともあれ、あるものは利用させてもらうつもりです。
同族から見ればダメな私でも、その名前でカイトさんのお役に立てるなら、最大限使わせてもらおうと思っています。
だって、私はもう、カイトさんの奥さんなんですからね。
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