◇12.新たな魔法の使用法を見つけたんですけど。


 何だか知らないが、リリアの様子がちょっとおかしい。

 顔が赤くて、妙に恥ずかしがっているような。

 今朝は俺を起こしに来てくれたらしいのだが、眠かったのでよく覚えていない。

 何かいい匂いで柔らかいものに触ったような気がするが……どう考えても夢だよな、あれ。

 まさか俺、寝ぼけて変なことしてないよな……。


 それはともかく、あれから他にも色々と闇属性のテストを行い、また一つ魔法と呼べるような力の使い方を発見した。

 闇属性は放出する魔力の波長を一定程度短くすると、攻撃的な性質を持つようになるらしい。

 魔力の塊を殺傷力のある形状に変えることができ、いつもの帯状の魔力にそれを流せば、帯にトゲを生やしたりもできるのだ。

 これで影布を買った人間が、代金踏み倒すために俺を襲おうとした場合、相手の手にした布を尖らせてグサッとやることも可能になるが……まあ、そんな不埒な奴はいないだろう、多分。


 それから、闇属性の魔力を細かく霧状にすることで、それを吸い込んだ相手に知覚過敏を生じさせられることもわかった。

 知覚過敏というか、言い換えれば痛みを増幅させる効果だ。

 触れた程度では何も起こらないが、毒や瞬発的な刺激──たとえば電撃などについては、これでダメージが増幅される。

 あるいは、ちょっと香辛料の効いた料理を食べた場合、この霧によって激辛料理に変貌したりする。


(戦闘で使えるのかな、これ……。でも、こんなのを吸わせる暇があるなら、即効で雷叩き込んだ方が早くないか……?)


 他に使うとしたら……会食の席で、料理に少量の毒を混ぜ込んだうえで敵国の人間に吸わせるとか、だろうか。

 ……などと考えてみたが、別に俺は暗殺者でもないので、やっぱり無理があるなと思い直す。


「いかにも『闇』って感じの効能だけど、これが活用される状況ってほぼないよなあ……。霧の方なんか特に」


「うーん、そうですね……」


 俺よりさらに戦いに馴染みがないリリアも、分からないといった様子で首を傾ける。


 そんな感じで、さすがに何でも活用できるわけじゃないと思っていたのだが、この後すぐに知覚過敏の霧を使う場面がやって来る。


 しかもそれは戦闘や暗殺という戦いの場面ではなく、人々が採掘を行う鉱山で、彼らを助けるためにであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る