◇11.リリアはお嫁さんになりたいんですけど。(リリア視点)


 私の名前はリリア・ゲインズフォール。

 竜人族の王家の末子です。

 『竜の巫女』なんて、偉そうな肩書を与えられていますが、実際にはお飾りの役職で、家族の皆からも見下されて育ちました。

 聖属性をはじめ、さまざまな魔法を使えますが、身体は小さく、私の爪や牙ではミスリルなどの固い金属は砕けません。

 『できそこないのリリア』と蔑まれ、しかも突然召喚されて知らない人間の国で殺されそうになった私。けれど、そんな私を助けてくれたのが魔術師のカイトさんでした。


 カイトさんはもともと普通の魔法も使えたそうですが、色々あって今は闇属性の魔法しか行使できないそうです。

 それなのに、ご本人は気にした様子もなく、闇魔法の研究をしながら薬屋さんを営んでおられます。

 もし、私が魔法さえできなくなったら、ずっと落ち込んだままだと思うので、すごく強い人なんだと尊敬しています。

 私もそんなカイトさんのお役に立てたらと思い、彼のお屋敷でお手伝いさせてもらっています。


 私が担当しているのは、主に火魔法や水魔法を使用する家事全般。

 それから、闇魔法の効能を調査する際に、竜化したり他の属性の魔法をぶつけたりして、効果を測定するお手伝いをしています。

 大したことはできませんが、カイトさんはいつも私にありがとうの言葉をかけてくれて、こちらを気遣ってくださいます。

 ほとんど押し掛け同然で居候しているのに、嫌がる素振りを見せることもなく……本当に、感謝してもしきれません。


 できればこの人とずっといっしょに暮らしたい、かなうのなら、お、お嫁さんになりたい、なんて、その、密かに思っているのですが……。

 ご迷惑になるといけないので、まずは仲良くなって、そこから距離を詰めていけたらなと……考えています。


 なので、私にもできることを毎日少しずつ。

 たとえば、彼より早く起きて朝ご飯を作って、お寝坊しないように起こしてあげるとか、そういうことから始めていくつもりです。

 今朝もなんとか先に目が覚めて、彼が起きる前にお部屋にお邪魔することができました。


「カイトさん……あ、朝ですよー…。お、起きて下さい―……」


「……んぅ………」


「カイトさーん……、えっと、お、起きないと、お布団めくっちゃいますよー……」


「んー……んっ」


 ぐいっ


「わひゃっ! ちょ、ちょっとカイトさん! 引っ張り込まないで! 私は枕じゃないですからっ!」


「んんー……? んぅ……」


「あ、あの……ね、寝ぼけて抱きしめないでください……。動けないですよぉ……」


 ……でも、彼にぎゅっとされて、本当は嬉しかったりするのでした。

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