第2話 総ての始まり

 現代

「なんだその髪色は!?」

 朝の風紀チェックは憂鬱だった。

「地毛です」

 そうとしか言えない。

 自分の頭には、日本人には珍しい、明るすぎる金色の髪が生えていた。

「そんなわけ有るか!?」

 初見の教師はこのように聞く耳を持ってくれない。

「根元見てください、色違いますか?」

 少しでも染めた後に伸びると、染まった髪色と、伸びた地毛で、色合いがカラメルの掛かった卵菓子のように見えることから、プリンと呼ばれる状態に成るのだが。自分の髪はそんな事には成らない。

「嘘つけ! 少し濃いぞ!」

 食い下がられる、何故か自分の髪は日本人のハズなのに、黒髪ではなく、結構明るく金髪が混じっている為、こういった事は慣れっこだが、面倒なのには変わりが無い。

「日焼けです」

 髪の色素も弱いので、少し日に当たると紫外線で脱色して薄くなるのだ。

「ちゃんと染めてこい」

 お約束の髪色差別をさせられている。

 因みに言ってしまうと、染色剤も安くないので、貧乏学生の自分には余り手が伸びないのだ。

「まあまあ、髪の染色禁止は校則ですから、金を黒く染めるのも校則違反ですよ?」

 珍しく救援が飛んできた。

 話題に飛び込んできた教師は威圧感もなくニコニコとしているが、先程まで鬼の首を取ったように得意気に威勢の良かった風紀の教師は一気になりを潜めた。

「しかし風紀が……」

 ソレでも食い下がろうとしてくるが。

「私が話を聞きますから、ここは私に任せて……」

「……」

 話の主役がいつの間にか自分から離れて、二人の教師に異動していた、呆然と空を見る、春の朝、青空が広がっていた。




「まったく、あの先生は仕事熱心なのは良いが、高圧的でよろしくない」

 いつの間にか騒いで居た方の教師はいなくなっていた。

「ありがとうございます?」

 思わず礼をする、疑問形だが。

「礼にはおよばんさ、私も少し興味があってな?」

 どうやら、完全に助かったわけでもないらしかった。


 とある歴史教師視点

「今年もキラキラしとるなあ?」

 生徒名簿を何とも言えないことを呟きつつ眺める、名簿には所謂若者に特徴的な名前が並んでいた。

「ピカチュウ、クラウド、ルナ、サタン……」

 良くあてたなと言う当て字が並んでいた。人名に対する当て字は自由だとしても、最近は少々自由が過ぎる。

「佐古苦(さあふるく)?」

 これは名字だが……

「珍しいな?」

 思わずルーツを調べた。マニアックすぎて国内件数一桁二桁台、ごくわずかとしか表示されないシリーズだ。

「レアだな?」

 こう言ったモノをたどってみるのも楽しいかもしれない。

 大学時代は歴史専攻で、昔取った杵柄と、もはやライフワークとなった趣味の歴史考察に思いをはせる。

「見かけたら色々聞いてみよう」


 そんなこんなで……


 思ったより目立つ容姿をしていた当人を捕まえてみた次第である。


「所で、その髪色と名字、何処かしらルーツが有ると思うのだが、色々教えてくれないか?」


 そして、この出会いが後々でそんなことになるとは、当時は一切わからなかった。


 数年後

「どうせだから、君のルーツについて、論文書いてみないか?」

「いや、言うほど珍しくもないですよ?」

「確実にそれどころじゃない、記録に残ってるのは渡った当初だけだ、その後はほぼほぼ行方不明だ、万一資料でも残ってたら第一人者だぞ?」

「司馬遼太朗の如く、フィクション扱いされません?」

「なあに、最悪私が卒論の単位をやろう」

「……ちょっと祖父母にでも聞いてみます」


 田舎にて

「ワシもあんまり詳しくないが、蔵に色々珍しいのあったな?」

「そろそろワシらも歳じゃし、価値も分からんから、調べてくれるならありがたいのう?」

 そこそこ歓迎され、立派な蔵の中に案内された。


 追伸

 名字云々は適当なフィクションです、良いの思いつかなかった。

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