美形の王様

 昔々、あるところに容姿端麗ようしたんれいな王様がおりました。

 王様の国は大きくありませんでしたが、その容姿を一目見ようと数多の国の有力貴族の女性が面会に訪れました。

 やがて王様は美しい女性と結ばれました。

 彼女は決して大きな国の出身ではなく、資産家の娘でもありませんでしたが、二人は純粋に恋をして結婚したのです。

 王国の民も美しい女王を心から歓迎し、祝福しました。

 二人が結婚をして間もなく、女王は第一子を身籠ります。

 二人はたいそう喜びましたが、それは長く続きませんでした。

 生まれてきた子供の顔が、明らかにみにくかったからです。

 王様はショックを受け、「これは私の子供ではない!」と叫びました。

 女王は痛みに耐えて涙を流しながら「いいえ、この子は私たちの子供です」と訴えました。

 しかし、王様は信じませんでした。


「きっと別の男との間に出来た子供だ」


 王様は女王と赤ん坊を国から追放しました。

 失意の王様は塞ぎ込みましたが、女王追放の噂を聞きつけた他国の女性が続々と訪れる様になりました。

 一年後、新たな女王が誕生しました。

 彼女も前の女王に負けぬ絶世の美女で、今度は上手く行くだろうと国民も胸を撫で下ろしました。

 やがて、新たな女王が身籠りました。

 しかし、生まれてきた子供の顔はまたもや醜かったのです。


「お前も、私を裏切るのか!」


 王様は絶望し、またもや女王と赤ん坊を追放しました。

 王様は誰も信じられなくなり、心はどんどん荒んでいきました。

 ある日、一人の老婆が王様に会いにやってきました。


「お久しぶりです。立派に成長されましたね」

「誰だ。私はお前のことなど知らぬ」

「私は先代の王様と交流があった者です。前回会った時、あなたは二歳でした。覚えていないのも仕方ありません」

「父とはどのような関係だったのだ」

「王様とは秘密の契約をしていたのです」


 老婆がにやりと笑います。


「貴様、魔女だな?」

「いかにも」


 老婆はあっさりと自分の正体を明かします。


「一体、どんな契約をしたというんだ」

「自分の子供、つまり貴方に永遠の魔法をかける契約です」

「私に? 一体、どんな魔法をかけたのだ!」

「絶世の美男子に見える魔法でございます」

「……なに?」

「生まれた息子があまりに不細工だったので、お願いされたのです。金貨一袋で」


 魔女はきょろきょろと周りを見回します。


「二年ほど前に子供を授かったとお聞きしたので、そろそろ私の出番かなと思い参上したのですが……、おきさきさまとご子息しそくは今どちらに?」

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