超古代文明の解明


 月令1987年。

 とある会見室で、白衣を着た一人の男性がマイクの前に立った。


「えー、皆さま。お集まりいただき誠にありがとうございます」


 複数のフラッシュが明滅し、会見に慣れていない男性は眼鏡の奥の瞳を瞬かせた。


「先月見つかりました超古代文明の遺跡より発掘した品々を鑑定したところ、驚くべき発見があった為、この場を設けさせていただきました。まずはこちらをご覧ください」


 照明が絞られ、彼の後ろのモニターに一枚の写真が投影される。

 映し出されていたのは、半分以上が石に埋まった、薄青色の円盤の様な何かだった。


「これは何でしょうか?」


 記者の一人が尋ねると、男は待っていましたとばかりに説明を再開する。


「解析した結果、これは古代文明において記録媒体装置として使われていたものであります」

「記録媒体と言いますと、我々の扱うニュートロンマニュピレイターのようなもの、という認識でよろしいですか」

「いかにも」


 おお、とどよめきが起こる。


「見ての通り、その半分以上が鉱石化していますが、辛うじて残された部分から断片的に当時の映像を取り出す事に成功したのです!」


 フラッシュがより強くなる。男はもう、ほぼ目を瞑っていた。


「古代文明には我々ほどの科学技術力は無いと考えられてきました。しかし、この重要な資料を紐解いた結果、彼らは我々と同等以上の技術力を有している事が判明したのです」

「……つまり、宇宙への進出を果たしていたと?」

「その通り。しかも、侵略的宇宙人との遭遇も果たしていた」

「なんと。もしや、その宇宙人によって古代文明は滅ぼされたのですか!?」


 男は一拍間を置いて、ゆっくりと首を振る。


「いいえ。彼らは自らの力、知恵、技術で異星人を撃退したのです。この記録媒体には、その時の記録が刻まれていたのです!」


 フラッシュがより強くなる。男が眼鏡の脇のボタンを押すと、たちまちレンズが黒みがかりサングラスへと変わった。


「現在、データをサルベージ出来た円盤はこの一枚ですが、我々は他にも複数の記録媒体回収に成功しています。近いうちに、新たな発見をお伝えできるでしょう」

「それは素晴らしい。いつか我々も直に記録を閲覧できる日が来ると考えてよろしいでしょうか?」

「勿論です。それまで、しばしお待ちください」

「この円盤にも通例に則り名前を付ける事になると思いますが」

「中に残されたデータを確認した後に、適切な名前を付けるのが良いと考えています」

「最初の一枚に付ける名前はもう決めていますか?」


 男は大きく頷いてから、写真の円盤を指差す。

 そこには、ほぼ掠れて読めなくなっているものの、古代文字と思しき文章が見て取れた。


「我々は記念すべきこの一枚目に、古代人への敬意を表して、解読したオリジナルの名前を付けようと思います」


 記者が固唾を呑んで見守る中、男は声高らかに宣言した。



「インデペンデンスデイ!」

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