第13話
そして暫くの間会談が続く。
言葉が字幕で表示されるので読む。
天罰神はバルドーガ=ビブルガスと言う名前のゴツいリザードマン的な見た目に一時的に成っているが、姿は幾らでも変えられるらしい。
流れ的には
「弱小の人間風情が何しに来た」
ブラッセルさんが太陽をだしながら、
「天罰の定義を狭めて頂きたく来させて頂きました」
「ほう。但の雑魚とは違う様だな。だが、仮にも天罰のシステム自体は無くすと逆に不便なのは解っているだろう?」
「それを貴方様が悪用してるからそれを辞めろと嘆願に来ている所なのです」↓
「…そうだな。これで何度目かだし、ならそれをやらない変わりにそちら側の罪人の処罰を与える役をやらせて貰おうか。それなりに天罰を与える対象の数が確保出来るならそれで構わんのでな」
「そう言う事なら融通させて頂きます」
「交渉成立と言う事で宜しいな?」
「はい」
「さて、取り決め自体は良いとは言った物の、武力行使する気満々で来られたのは頂けないな。抗議として、三回だけ攻撃をさせて貰うぞ」
「失礼だったのは申し訳ございません。それで気が済むなら三撃だけおやりになってください」
「さて話は決まった。…ではこれにしよう…『貴様達は飛び続けるなら私から半径百メートルの間は一切の浮力を失うで有ろう』」
空を飛んでた人達が一気に浮力を失い航空船も落ちかけるが空間に足場を出せる人達がそれをカバーする。
「次は『その足場は脆く崩れ去るで有ろう』」
足場が壊れ始めるが皆で追加の足場を逐次追加で出して何とか凌ぐ。…と言うかアレだ。空間や無機物が対象だから耳栓とか関係無かったのか。
「最後は『このままなら私から半径百メートルの間は空気の循環の一切は三十秒間停まるで有ろう』」
呼吸が…。だが何とか三十秒間皆が耐える。
「死者は零。か。雑魚と言った事を謝罪しよう。では明日にでも汝らの刑務所辺りにでも顔を出す事にさせて頂こう。」
「…はぁ、はぁ。はい。解りました」
「ではお帰り願おうか」
「では皆の者撤収する事にしましょう」
そして皆で撤収した。
…範囲が限定的だったのはよかったとは言え、あれが広範囲で展開出来るならかなりやばい予感がする三撃だった。まあ、結果的には処刑人が一人増えたと言う事で良いのかも知れないが、戦って勝てって言われても無理な予感がした。戦わないで済んで良かった良かった。
因みに後で聞いた話だが、炎系因子を運用する上で燃え上がるまま身に纏う様な事をやれるレベルまで上がっていた場合それに酸素が結構持って行かれる為に低酸素濃度の状態でも生存出来ると言う理屈が有ったらしかった。…確かにエネルギーを使い燃えている炎では無く実際の炎を身に纏うとか近場の酸素がごっそりと減りそうだし、当然の結果だったのだろう。
そこで周りの人に全然やられる前と変わらないな?と言われるが…。実際倒せない敵と戦わされるのはもう回数をこなしているのだから其所まで今更怯える様な状態に成る事でも無かった。…一種の諦めに近い状態だが、あれらへの対策の為の力を集めてる段階での今回の件だったので、まあそりゃ負けるよね。と言う感じなのだった。
因みにこれは推測なのだが、仮にあの抗議の三発で此方を一時的に制圧していなければ武力誇示に対して屈した的な流れに取られても仕方ない気がする。つまり貴様らなんて簡単に倒せるけど、此方にも利点は有るからその要求を飲んでやるって言う言外の主張だったのでは無いだろうか。…そう考えるとアレをやらないと感覚的に小物扱いされていた気がする。…抗議としてやるにはやり過ぎな気もするけれども。
そう言えばさほど騒ぎには成らなかったが、実際飛行船が落とされそうに成るだろうとは想定自体はしていた訳だし、言い終わるまでの発言自体が一種の予告に成っていたのも有って、空気の循環を止められた時に騒いで空気を浪費するのは自殺行為なのも有るから、要は騒ぐタイミング自体が無かったんじゃないかと思う。船から結局は出なかったのにビーコンとか落ちた時の装備を持つ様にさせられた訳だしね。
それはさておき、浮力を全部消して居たならばどうやってあのリザードマンは飛んでいたのだろうか?考えられるのは二つ。一つ目、そもそもあのリザードマンは光の虚像で本体は別の場所に居た。二つ目、浮力を奪う場所の例外を密かに創り、体を変形出来るのだから密かに其所に体を伸ばして置いてそこで体全体を浮かばせるだけの浮力を獲得していた。
後者の場合そのエリアを割り出して其所に移動さえし続ければ何とか継続戦闘は可能なはずだ。だが、大勢で囲んで倒すのは厳しい気がする。今回の力の範囲がアレで限界ならばだが、力の及ばない更に上空に移動して隕石を落とすとか狙撃するとか、同じく地面側から狙撃するとかが考えられそうだ。…そんな長距離狙撃を成功出来る奴なんて簡単には居ないだろうし、一撃で倒しきれる保証だって有りはしないのだけれども。
…いや、ちょっと待て、浮力の云々を言う際に自分は含まない言い方をしていた様な…。うん。記録を確認してみるか。
で、確認してみた所、…うわ。貴様達は。って言ってるよ。キチンと自分は対象外にしてあった訳だ。…要はこれすれば制空権あっさり取れる訳だろ?酷すぎるわな…。
天罰神の能力としては言葉の通りに現象が起きる能力。万能では有るが、細かい現象設定をしようとすると文言が長く成りすぎると思われ、一定以上の高速戦闘には向かないと思われる。まあそれは能力の設定の条件付けで文言の簡略化はどうにかしようは有るはずだが、戦闘中に設定するのは現実的では無いと思われる為、想定外の事態に弱い(攻撃迄の時間が多く成り易い)能力とも言えるはず。
その点では天罰神の取った方法は巧いと言える。何故なら何等かの手段で飛ぶなり何なりで近場に来てる時点で滞空をしているのだからそれを潰して来たと言うわけだ。
言葉を発せ無い様に持って行く方法が効けば良いが、それが効くのだとしたら自分から空気の循環を停めるなんて事を普通やるだろうか?声が届かなく成るでは無いか。…だから恐らく言葉を響かせる必要性は然程無いのだと思われる。そうでも無いと完全に防音対策されたらそれだけで詰んでしまう訳だしね。
…と、なると、対生物でも無ければ少しでも触れればある程度の範囲に一括適用でもするとかだろうか?それなら『空間接合』で隔離空間に成ってた航空船内にまで効果が来た理由にも成るかも知れない。…一括適用、か。盾とか結界とか意味なく効果が侵略してきそうだ。…煮詰めてみたらやっぱりクソゲーだったな。これは。時短テクは例えるならコマンド式的にやるなら○○と言ったら△△と言う内容が発動すると言う設定を事前に能力を使いやっておけば良い訳なのだが、戦闘中に設定をやるのは設定中の言葉を聞かれたら不意討ち効果も期待出来ないし設定やるために攻撃もワンテンポ遅れる形に成ってしまう訳だな。…まあ三撃しか見てない訳だから三撃の内容しか出来ないなんて事は流石に無いだろうけども。
そして暫く経った後に地上へと降り立ったのだった。
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