第12話
さて、一時間の間に準備を行わないとね。
因みに飛行船の名前はイルメナイト号と言い、語源はチタン鉄鉱の別名なのだそうだ。そして、新人の自分が今回の件に動員されたのは炎系の因子を一定以上育てて居たためな様だ。…まあ疑似的な太陽を一時的に産み出すのをやるつもりなら炎系因子を獲得する事で得るそれらへの耐性も必要なのは納得出来る話では有る。仮に太陽が近場にいきなり現れたなんて成ったら耐性の無い近場の奴は普通にオーブンでチンされた感じに成るか焼け死にそうだしね。
そう考えると遥か高空で交渉が行われるのはプラスな点も結構あるとは言えた。火力全開にしても問題無さそうだし。ただ、動員された人数は其所まで多くは無い。もし飛行船が何らかの手段で落とされても生存出来る奴しか居ない訳でも無いので飛べるなり足場を出せる奴がカバー出来る範疇の人数に抑えられて居るためだ。
まあ、パラシュートなり何なりの装備が無い訳でも無いので念の為の処置では有るのだけれど。
さて、ひとまず今必要なのは自分用のパラシュートと空中に足場を出せる人の把握。自分も足場を出せるが、一時的な物だし継続的な足場を創れる人へ目掛けて移動するようにしよう。で、それが天罰神の妨害で無理そうなら素直にパラシュートで下に降りる事にしますか。…そう言えば太陽を出す能力と仮定するとして、爆発系の能力で似たのを出したマンガが有ったな。まあそれではその能力はかませに成っていたが、要は纏うエネルギーを突破されてしまうと普通に攻撃を当てられてしまう為、但でさえ目立つのだからそう言うのを出来る奴が敵に居たら普通に攻略されてしまうと言うわけだ。…目立ちすぎるのだから攻撃の集中砲火を喰らうのは必至となり、夜に使えば照明弾代わりには成るとは言え、敵に自分の居場所を教えるに等しい。…だからって展開中に一番安全であろう太陽の中心部に術者が存在しておく訳では無いのは愚かなのか賢いのか。…まあ【通過】等の間に有る物を無視する系統の物が敵に有れば但の良い的でしかないと考えれば仕方ないのかも知れないが、高空戦で絶対的な足場が少ない場合はそんなに意味が無い気がするのだが…。…まあそれは時と場合か。さっさと確認を済ますとしよう。
そして大体の把握を済まし道具も揃え準備を済まし、イルメナイト号へと搭乗したのだった。
船内を移動しつつ、少数(とは言え百人其処らは居るが)で船が運用出来るのかと他の人に聞いたらある程度自動化されていると答えられた。お礼を言いつつ離れ、持ち場へと移動する。…そう言えば耳栓くらいはもう付けていた方が無難だと思うので耳栓を先に付けておく。だが付けてみて解ったが、…【破壊】因子の破壊衝動を抑える為に【絶対感覚】を常時発動しているので、耳栓の意味が無い可能性が有る様だ。…消音結界的なのを使える人を探そう。…今回の場合天罰神と戦闘に成ったらそう言うサポートが無いと戦闘に参加するのは自殺行為と等しいと言う結果に成ってしまった。…これはやばい所に来てしまった様だ。そうだな。この航空船のエネルギーの補充係でも買って出る事にしよう。…しかし、絶対感覚を失わない能力が有るならそれらを使ったら危ない場面でも一時的に封じる事も出来ず運用してしまう事に成る…か。つまり閃光爆弾とか匂い玉とかの感覚を痛め付ける系の攻撃を喰らうと洒落に成らない事に成ると言う事だ。感覚を使えない様にする力を無効化する力と言えば聞こえは良いがそれが【破壊】因子との兼ね合い上“常に”で有るために今回の様な話に成ってしまった訳だ。但、感覚がいつも使えるってだけなら感覚を使いたく無いなら自分のその感覚に伝わる物がそもそも無い状態に出来れば良いはずだ。備品の中に消音結界的なのを張る道具が無いか探して見る事にしよう。
そして移動しながら道具を探して暫くたち見付ける事が出来たので早速装備する。
この船はエネルギー障壁を張るためのリングを幾つか周りに展開していて高速機動時にはある程度仕舞われる様に成っている…らしい。そのリングは結界の外側にも一部存在するためそれを守る人員が必要なのだ。まあそれは飛べる人に任せれば良いはず。障壁を全体に展開するなら此方からの攻撃をするのも防がれてしまうだろうので、空間系の因子を使い結界を無視して攻撃を届ける能力を使う人員が必要だ。…逆に言えば敵側にそれが出来る能力者が居たらエネルギー障壁等意味が無いと言う事でもあるのだが、だからこそ役割分担して船の護衛を行うのだ。
さてそろそろ現地に着く頃か、話に聞いてたアレがそろそろ見れるかな?
そして持ち場で暫く待っていると航空船が一時的に滞空を始めそれを包む様に辺りの空間が曲がり始めた。
要は【空間】因子の技の内の一つの『空間接合』らしい。空間をΩの様にねじ曲げ、下の部分を繋げて隔離空間を創り、本来其所を通るはずだった攻撃を下の線の部分のみを通させる様にする能力らしい。しかも移動してもその状態を継続可能なのだとか。…破る方法も有るそうだが、【空間】因子チート過ぎないか?
まあそれはさておき、そろそろ天罰神の居る所に着くはずだ。天罰神と普通に話し合い出来るならばそれで良いが、戦闘に成る可能性もそれなりに有る訳だが、基本的に○○すれば△△が起きるぞと言う警告形式ならば△△が起きるまでワンテンポ遅れが有る為に○○する前に対策を打つ事が可能では有る。但し、生き続けてたら等の既に現在進行形でやってる事に対してそれを行われた場合は厳しい事に成るらしい。即座に辞められる事でも無いと結果として天罰が即座に発動してしまうのだ。…厄介だな…。
…?空間接合の隙間から何人か外の空間へと出て行った様だが、それらしい存在が居る様子は見る限りは無い。天罰神が透明な体をしているのか、光学迷彩でも習得していて見えないだけなのか?いや透明な体ならともかく光学迷彩の場合は下へ行く光の量が周りと比べて減るから結局は影でバレそうだけど…。
そこで肩を叩かれたので横を見る。
「訳が解らんって顔してるな」…と、紙に字を書いた奴を見せてきて同時に紙とペンを渡してきた。筆談しようと言う事らしい。
次のように書く。
「じゃあどうやって見えなくしてるんですかね?」
すると、
「重力レンズだと思うよ。ああ、勘違いし無い様に言っておくと、重力で光が曲がる訳じゃ無くて、光が通る時空が重力で歪むから結果的に光が曲がる仕組みだったはず」
「成る程。重力レンズですか。地面側へはその屈折で周りと似たくらいの光が届けられてるから下からは気付けない様に成ってる訳ですか」
「そうだね。方式は別として『空間歪曲』的な能力は持ってると推測出来る。…だから結果的に『空間接合』も突破されるだろうね」
「楽に終わりそうには無いって事ですか…」
「まあ戦う事に成ればの話だからどうなるかを待ってれば良いんじゃ無いかな」
「そうですね。ああそう言えば空間接合でしたっけ?これ有れば戦場で敵陣行くのは楽勝じゃ無いですかね?」
「行きは良いが帰りがな。例えば敵側が多い状態で混戦状態に成った時に使ったら味方側の逃げ道を塞ぐ感じに成ってしまうし」
「ああ成る程」
「そう言えばビーコンは持ってるか?下に落ちた奴等を後で回収するための通信機器代わりに持っとけと言われたけど」
「会議の時に言われたので持ってますけど、そんなにばらけた状態に成りますかね?」
「解らないぞ、念には念を入れてた方が無難ではあるし」
そこで近場に有った液晶に文字が映る。
どうやら天罰神との会談が始まった様だ。
暫くは様子を見守る事にしよう。
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