第11話
次の日。食堂で朝食を済ます。鍛錬に行く前に申請を済まそうとすると申請内容を見た受け付けの人から【通過】は辞めた方が良いと言われた。
何故かと問うと、要は自分の体と何かが重なってる状態はとても気持ちが悪いのだそうで、何故そうなってるかと問うと、オートで全て通過にしちゃうと地面に沈むし、何にも触れれないし、だからと言って【通過】のオンオフをマニュアルにしたらその異物感が無いと何かと重なってる状態だと気付かずに能力を解除してしまう可能性が有り、そのまま能力を解除したら体内に物を【転移】されたのと同じ状態に成って自滅してしまうらしい。だが、異物感が有ればそれに気付けると言うわけか。…異物感、ね。無くてはマニュアルがまともに使えないが、有っても中々に精神的にキツそうだ…。うん。【サイコキネシス】の方にしよう。回避系は欲しいが、何かが体内を通過したら異物感が発生するって空気相手にも発生するならあれすぎるし、だからと空気を通過しない様にするなら空気を操り攻撃するタイプの能力は直撃してしまう気がするし、地面に沈まない様にするために地面を通過対象から外すと土系の能力も直撃するだろう。…まあそれは常に飛んでりゃ対象に含んでても良いんだけれど。大気系とか土系か。有っても悪く無さそうではあるが…。ひとまずは【サイコキネシス】からだ。
そして申請を済まし、訓練に向かおうとした所で最初に案内して貰った少佐が此方を呼び止めて来た。
「貴方に参加して欲しい検案が有るの。あ、これは拒否権無しの強制参加ね」
「ああ、はい。そうですか。それでどの様な検案なのでしょうか?」
「一言で言えばやり過ぎてるある神の説得をする奴の護衛要員やれって話ね」
「無理難題が来ましたね」
「大丈夫大丈夫。基本的には話の通じる神だから」
「でも説得する必要性があるんですよね?」
「言わば、契約とか噂とかそう言った一種の警告を破った者に対する天罰神なんだけど、その手法と天罰内容が行き過ぎてるから辞めろとは言わないが緩和してくれと交渉するって流れね」
「天罰くらう様な条件満たすのが悪いんじゃないですかね?」
「それがね。その天罰神は眷属を使い色々な噂なり禁止事項なり何なりを世間に流布していて、それを実行したり破っててしまったりすると、その警告なり噂なりで言及した事を実際に行ってしまうらしいの。つまり警告はした。それでも貴様はそれをやった。これはその罰だ。…と言う奴ね」
「それは酷いですね。下手に肝試しも出来やしないじゃ無いですか」
「噂を知っていないならこの構図は成立し無いから、噂を知ってるか知らないかの見分ける手段も持っているみたいね。忌々しい事に」
「つまりこうすると死にますよって噂を聞いたから試してみたら自殺扱いで実際にその神が殺しに来ると?」
「要はそう言う事ね。形上は相手が自分から望んだ事を実現してあげてるだけに成るから、文句を言われる筋合いは無いと主張されてるみたいね」
「どうするんですかそれ…」
「説得するしか無いでしょう」
「それはやばい予感しかし無いんですが」
「まあそうよね…でも策が無い訳でも無い。天罰の内容が噂や警告毎に異なるらしいのだけど、天罰を喰らう事でむしろ良い結果に成るパターンも有るらしいのよ。せめて行動制限系はそれにして貰えれば良いのだけど」
「でも、それよりは噂の流布を辞めさせた方が…出来るならこんな話には成ってないか、それに今回の場合のの基本の警告無視と契約違反によるそれに対する罰っての自体は別に有って悪い訳じゃ無いですし」
「そうなのよ。システム自体は悪くない。それを広い範囲に適用出来る様に細工された結果に成るのよね…
「さて、それはさておき、最低限の把握はこれで良いとして、皆が居る所に行くわよ。それから話が有るらしいわ」
「偉い人でも来てるんですか?」
「ええ。アナトリア=ブラッセルって人が来てるわ。一応コードネームらしいけど」
「なんか皇族っぽい名前ですね」
「ブラッセルの日の出って意味らしいわ」
「へぇ。仰々しい名前ですね。なんかそんな名前に成った理由でも有るんですか?」
「要は火属性の特大バフ使いらしいわ。で、それでそれを受けた人が軽く輝くから日の出が来たようだ…と。まあ大げさだけど、個人的には詩的な表現も嫌いじゃ無いわね」
「ふむ特大バフですか。確かにあの戦場を越える一つの回答としては有りかも知れませんね。でもそんなに膨大なエネルギーを運用したら本人も輝いてしまうのでは?」
「…有りそうね。むしろそっちっぽいわね。それで太陽が出て来たと形容するくらいには明るく成ってしまうのでしょう」
「なんか今回が初の人なんですかね?それを知らないって」
「実際にそんなのに成ったのは見たこと無いってだけね。夜使ったら間違いなく標的にされるでしょうし。」
「ああ、つまりその状態に成れるけど、使いどきに困る能力みたいな物ですかね」
「そうだとは思うけど、それはともかく、特大バフ。より正確に言えばステータスへの干渉を受け取らなければバフの恩恵など得られない訳だから、バフを受けた状態で彼女へと反逆したら、そのバフ自体がそいつを焼き殺す可能性が有るって事を頭に入れておきなさいよ」
「これは盲点でしたね。ステータスへの根本的な干渉をするバフは使い方を変えれば即死魔法と成り得る訳ですか。こわいこわい」
「冗談言わないの。さて、その人が居る大部屋へと行くわよ」
「解りました。実際そう言う能力が有るならそれに対する耐性的な能力だって有るでしょうしね」
「一応言っておくと、あくまで一属性のバフなんだから対処方法は幾らでも有る。…ってのは事実では有るけど、仮に太陽生成的な能力だったなら常に一定以上の量の水を生成し続けるか海レベルの水が無いと水をぶつければ脳死で勝利出来る…なんて思っても実現不可能としか言えないと思うからそのつもりで居てね」
「嫌だな。自分がそいつを倒しに行くみたいな前振りされてるみたいじゃ無いですか」
「そう言うのをしない様に釘を刺しているだけよ」
「…不本意ですが、解りましたよ」
そして大部屋へと移動し、全員が揃うのを待った後に件のブラッセルさんが話し始めた。
「まず最初に、今回の協力感謝します。もし仮に説得が上手く行かなくともそれなりの報酬は用意させて頂く事を約束します。…さて、今回の説得対象は天罰神に成る訳ですが、彼方に都合の良い警告を発して来る可能性があるので、基本的に不必要な音は因子なり何なりで遮断して下さい。そうしないと彼方に都合の良い警告を出して来る可能性があるので」
聞いていた内の一人が発言する。
「それでどうやって説得なんてするんだ?会話出来ないぞ」
「その為に私が来ました。まさか話し合いの場で天罰神が己で手を下す奴をやるのは明確な敵対行為に成るためにやらないでしょうが、自動化しているシステムの部分についてはそれまで解除してしまうとシステムの意味が無いので、そのままに成るため、簡易的な現象を起こすエネルギーにバフのエネルギーをぶつけて押し潰してしまう訳ですね。」
「つまり、天罰神が手を直接下す様なそれで無ければ防げるって認識で良いのか?」
「その認識で間違いないです。ですが、日常生活上でそんなレベルのエネルギーを常に纏っておけと言うのは大抵の人には無理が有ります。恐らく、一度知ったなら忘れようが自己責任と成る訳ですけど。」
「対処方法は有るが、常にやるのは現実的では無い訳か。そりゃ辞めさせたいって話にも成る訳だ」
「話を続けても?」
「どうぞ」
「では、今回の天罰神は遥か上空に存在しています。空を飛べる人だけで行くのは人員が足りないので飛行船で行く事に成りますが、皆さんにはその船を守る役目をして貰いたいのです。…異論が有るなら発言をお願いします」
そして暫く沈黙が続く。
「…異論は無い様ですね。では飛行船の護衛の役割分担を始めましょうか」
そして飛行船の護衛の役割分担の話を暫く行い、その上でこんな事を彼女は言った。
「件の飛行船はエネルギーを注ぎ込む事でエネルギーの障壁を展開させる事が出来ます。一部の人へは飛行船へのエネルギーのチャージの方法を教えますので、頭に入れて置いて下さい」
そして説得は誰がやるかなど、更に幾つか話し合った後、一時間後に飛行船で天罰神の居る高空へと出発する事に成った。
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