第7話

さて、寮に帰ったのは良いとして、少ししたら飯を食いに行こう。一先ずベットに横に成りつつ、考えてみる。…バリアなり鎧なりの纏う系は貫通系相手には余り役に立たない。必中系も、流石に当てる対象指定の段階で対象とは違う奴を対象だと騙されてたら命中するのは無理だろう。指定すべき対象に指定出来ておらず指定先が違う訳だし。故に必中系のみの相手なら騙す系は有用になる。必中を覆した訳じゃ無い。指定先を自分から別の何かに変えさせただけに成る訳だし。…と、成ると、必中系を使うなら看破系能力の因子も欲しいか。


能力の起点を相手自身にさせるのはレジストされる可能性が有るのは解る。だが、相手のスピード無視が出来るのは魅力か。一応能力の起点を敵自身にするのは新しい因子を手に入れなくともやれそうだが…。


あー。どうすっかな…。


…世界に存在する能力が増えれば増える程対策を練る上で考えるべき事ややるべき事は増えていく。…某金属の話をした時にも出た、便利に成りすぎても逆に面倒。本当だよなぁ。


…仮に全部対処可能な能力を創ろうとするとどう考えても盛りすぎなんだよな。それを成立させるために必要な理屈が多すぎて、一つの能力に纏めきれる気がしない。多分少なく纏めるのは簡単では無いのだし。…でも、逆に言えば不可能では無い訳ではある。守護系で言ってみよう。ゲーム的に言えば己のステータス変動全てを不発させキャンセルする能力が有れば良いのだ。…方式が違う方法をぶつければとかそんなのは関係無くて此方のステータス変動が起きると言う事自体を潰す訳なので、理屈的には少ない量で済む。


…つまり不都合な理屈を無視するのを可能とする理屈を組み立てれば良いのだが、攻撃側でそれをやろうとすると、ブラックリスト方式では限界が有るのも事実。


…守るのは容易く、攻めるのは難しい。


「…【破壊】はやっぱり必要、か。どんな防御系が有ろうが破壊して突破出来る訳だし。…でもリスクがなぁ。後ベタだし…」


暫く更に考え煮詰まるのを感じ気分転換に飯を食いに行くことにする。


すると食堂で一緒に入った二人と遭遇したので一緒に席に座る。


ロッカがラインさんに因子何持ってるのか改めて聞いているが取り合わない。…いや、毛色が変わってきたぞ?


「そちらは手に入れたばかりのはずの因子が無くのうてるのやけど、どう言う仕掛けなんや?」


「別に無くなってる訳では無いから、成長させた結果形が変わったんだろう。それがどうした?」


そして彼は氷系因子を使用した。


「変わりすぎなんやよ。…あれから設備に更に籠もりでもしたん?」


「そんなのしなくても戦争やらされたろう?それなりに経験値くらい入るはずだが」


「生き延びられるならそうやろうけど、あんなのを生き延びられるのを最低限基準とかにしないでくれへん?」


「一定以上ステータスが高い状態に出来て回復も出来れば真正面からのゴリ押しも不可能では無いだろう。現象が起こりきる前にその場を突っ切ってしまえば良いだけのこと。」


「その理屈の場合敵の拠点に着いた後も攻撃喰らわない為には力の根源潰すまで一切一定速度以下の速度に成ったら駄目何やけどそれ解ってるん?」


「【体力無限】とか有れば理論上は不可能では無いはずだが?」


「…まさかそれをやったなんて言わへんよね?」


「やったが?これでもダンジョン上がりだし、攻略限界を超えた下層へ続く転移罠って言うデストラップから生存したこともあるぞ」


「それ攻略が進むとショートカットとして使えそうやけど攻略が済んでない強い奴が仰山居る所に跳ばされて生き延びはったん?」


「だから、そう言ってるが?まあ、流石にやったときは逃げの一手をし続けたが」


「それが出来たのは其方が持ってる特殊な因子群と関係有ったりするん?」


「さてな。縛りプレイしてたわけじゃ無いから関係有ると言えば有るが」


「くそ、これじゃ解らへん」


「教える気は無いから其方はそれで問題無い。只、戦争で使われてたエリア出すあれは要はエネルギーを領域内に満たしてそれを元に現象を起こす物と思ったから、エネルギーを放出し続けて至近のエネルギーを潰し続けながら移動したら至近からいきなり発動するタイプの奴に限れば起きる前に潰せたし、ある程度離れた場所からの攻撃に相手の攻撃を限定出来たから、実際何とか成る物だぞ」


「…マジかよ…」


「とりあえずもう良いか?」


「…ああ、悪ぃ。」


「なら口を出すが、もしそれが可能なら対処方法が結構簡単そうに見えるから、只エネルギーをぶつけるだけで対処可能ならあんな戦場に成ってない気がするんだが?だから他にもまだ理由が有るんじゃないか?」


「…それはそうだが、…まあ良いか。知覚系因子で領域内で現象を起こす為にエネルギーの集まってる場所を現象が起きるより先に知って現象が起きる迄に潰すのを時間加速系因子で無理矢理行った結果だ。エネルギーを只展開するだけでは領域内全部に一定以上のエネルギー量を展開してるのだから絶対量的にゴリ押しされて現象を通される可能性が普通に有るからな」


「…ふむ。それならやれる奴が少ないのも仕方ないか」


「おいおい普通に納得してんじゃ無いよ。言葉通りならつまり攻撃魔法を発動する前に潰せるってことなんよ?普通無理やからね。それは」


「そうなるな」


「…あはは。そうなるのか詳しく聞いても?」


「エネルギーを集まる段階で潰すのは車で例えるなら、自分で組み立てた車にガソリンを入れる行為をさせない行為なんやよ。現象を起こす元を起こせないレベルに迄潰してる訳だから当然やね」


「ふむ。めちゃくちゃ卑怯臭いな。」


「とは言え、何時も通じる訳でも無いがな」


「それでも充分やばいんやよこれは」


「それは別にもう良いだろう。


「とりあえず銀行強盗の件について言えるのはわいだけ出番無かったやんけ。評価後回しとかマジ勘弁やで…」


「まあまあ、敵の行動上そうなったのは仕方ないだろ」


「そうだな。最初から担当する時間の何時に来ても誰か一人は休憩中の形に成ってたんだから仕方ないだろう」


「…実際銀行強盗の確保に成功とか評価かなり高いやん?多分わいだけ個人で評価の為の何かのお題出されてもそれレベルの事は出来ない気がするのやけど」


「今回の場合は連続強盗犯の目的がある程度読めるヒントが有ったから出来た事で、多分単発の犯罪者相手には無理な方法だぞ?」


「でも実際因子を使わずに突破可能な物しか配備されてない場所を集中的に狙うとかは上も読んでたんじゃ無いんちゃうか?」


「一応因子のエネルギーの残滓を残さない方法は無くは無いが、それをやったらそれをやるのに必要な因子のエネルギーの残滓が残る可能性が有ると言う話が有る。要は絨毯の上に散らかる埃を掃除機で吸い取ったら絨毯に掃除機を掛けた後が残った。的な話で、細心の注意を払えばその痕跡も消す事自体は可能では有る。だから、因子を大量に使って、それの痕跡を消している可能性を考慮したらデカい所に襲撃してくる可能性を棄て切れなかったんだろうな」


「そう言えば犯罪者を一発で切り伏せてたけど、あれは奴が弱かったのか、ドグラスが強かったのか?」


「それについては答えかねるが、動揺して動きが止まった隙にクリティカルヒットを出しただけだと考えてくれれば良い」


「そっか。種については話す気は無しか」


「まあ少し特殊でな。余り話したくは無いな」


「あんまり希少な奴持って無いからよく分からないんだが、何で話したくないん?」


「理由は単純だ。レアで使い道が多く強力なのを持ってると色々と疑われやすいからだな。例えば催眠術を持ってると公言してる奴がモテてたら催眠術使ってんじゃね?と疑われるだろ?又は特定の因子が無ければ不可能な犯行のその特定の因子がレアで持ってる奴が少ない時とか…使い道が多い因子を持ってるとそう言うので容疑を掛けられやすく成るっていうデメリットが有るからな。だから喋りたくない訳だ」


「要するに無駄に疑われる原因に成るから喋るのは勘弁…と?」


「まあそう言う事に成る」


「さて、話を変えるんやけど、あの戦場ではビームは対策されてたけどレーザーは対策されて無かった様に見えたんやけどどうしてなんやろね?」


「それはそこそこの値段の装備にメタマテリアルって言う光を止める効果のある機構を強化したのを盛り込んだ装備が有るらしいぞ」


「へぇ。そんなのがあるんや。…ならあの時先に渡して欲しかったんやけどね。」


「あれは生半可な戦闘力なら後方支援をやれって圧力だろう。あんなのを初心者にやらせるんだからな」


「慢心させない為にやらせたと聞きましたけど」


「そりゃあそうだろう。申請と試練越えさえすれば能力が手に入る環境に成った訳だし、幾つか能力手に入れたら自分を過信してしまうかもだからな」


「実際周りの奴は自分より長い間その環境に居たのだから、もっと強いのが居ても何も不思議では無いんですけどね」


「だからってあんなのをやらせるのはどうかと思うんやけど」


「戦場で近接戦闘をやる場合の要求される戦闘力の指標の提示には成るから速い段階でやること自体は悪い事でも無いがな」


「何の因子を追加で手に入れるかねぇ。さっき一人で考えてたら煮詰まってしまったからアイディア聞きたいが」


「ああ、解る。実際、回避系、回復系、放出系、必中系…欲しい奴は結構あるんやけどね。どうするか…」


「先輩達に勝ちたいや追い付きたいなら、必需品的な能力以外はベタと呼べる能力は避けるべきだ。簡単に思い付く様なのは先にやってる人が居るだろうからな」


「でもレアな因子を持ってると色々と疑われやすいんやろ?」


「必要経費と割り切るしか無いだろう。手に入れる場合は追加で記録系の因子を取得して常に使って置いて疑われた際のアリバイとして提示するくらいはやっておいた方が無難だが」


「近接戦闘をしに行くにしても、されるにしても、ある程度の戦闘力は確保しときたいんやよね、そうじゃなきゃ自衛も出来ないし」


「それは言えてるな。後方支援をやるにしても敵に接近されたらある程度の戦闘力は無いと役立たず化するし」


「確かに必中系かそれに類する方法論くらいは確保しといた方が無難だな。じゃ無きゃ攻撃が当たらず完封される。までありうるし…」


「なら先ずは必中系優先でいいんや無い?」


「だな。一先ずはそうする事にしようか」


「必中系と言うか行動補正系能力なんだが、あれらは仕組み上習得がとても難しい物に成る。…一応持っては居るが」


「どんな試練なんや?」


「試練と言うか、…自己への行動補正機能の補正の型を自分で一定水準以上の形で造れなきゃ成らない。その理由としては単純で、型の流派なんかかなり有るわけだからそれら全てに合わせた因子を造るのも手間だし、更に我流でやってる奴の邪魔にも成るから、我流だろうが、流派の真似だろうが、一定水準を満たす行動が出来ないと意味が無い訳だ」


「それじゃ初心者への救済に成らないやん」


「だが、一回自分の全力がそれに認められるレベルに行きさえすれば体の疲労を考慮しないなら後はそれを何時でも安定して行う事が出来ると言う利点が有る」


「要は脱初心者辺りから中級者辺りがお世話に成りそうな因子だな」


「ゲームみたいやね。登録して置いた技を選択して発動的な感じなんやろ?」


「それは間違いでは無いが、強く成れば成るほど登録されてる物も強く出来るし、所有者の実力に応じて性能を上げられる因子ってのはそれなりに評価出来るだろう。…まあだから、所有者が弱いとそれに比例してこの因子も弱いんだが」


「使い手の実力依存の強さの因子…ね。要は一定水準の結果を常に行う能力か、自分の最高の実力を常に出せる能力…か。雑魚なら前者が欲しくて、実力者なら後者が欲しいな」


「その因子に登録されてる型が無いのが創造主の職務怠慢とは言えないだけの利点もしっかりと存在するから悩み処なんだ」


「なら必中系はどんなのが有るんだ?」


「場合にも依るけど、一言で言うなら縦横無尽に動く標的を見失うな。的な試練だな。オートホーミングで無くてマニュアルでやりたいなら要は標的を見失わない能力が最重要な訳だし、ホーミングの弾速以上のスピードで逃げられてるから攻撃が追い付かない時に当てる為の補正のダメ押しの調整をオートでやるのは騙す系能力相手には不安だから、必中させるにはそれなりのマニュアル操作が必要と言う形になる。だから見失わない能力が必要と言う事らしい。…まあ、一定水準以上のスピードで動く敵を見失わないで指定出来なきゃそもそも能力の照準合わせが出来ないからな…」


「居ると解ってれば指定出来るんやない?」


「個体への直接指定だろうが、騙す系で偽者を指定させられたら本物に当たらないんだろう。面倒だな…」


「そうだな。だから見失わない力が必要に成るわけだ。まあ、この理屈だと、最初から偽者のみが出て来ているなら当てらんないんだがな」


「まあそれはともかく、なら明日は必中系を捕りに行ってみる事にするか」


「それが良いな」


「此方もそうすることにしようやてね」


そして皆で部屋に戻り、その後見張り番をこなし寝たのだった。


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