第2話

部屋へと入ると二人の男が居た。…?何か触れた感覚が来た。何故だ?と疑問に思うが一先ず顔には出さない。


すると片方が話し掛けてきた。


「この部屋に今来たって事は君も新人って事で良いのかな?」


「ああ、はい」


「じゃあ互いに自己紹介するとしよう。俺はクロッカー=ストルブ。ロッカとでも呼んでくれ」


自己紹介されたので自分も自己紹介する事にする。


「自分はキリカ=バーロック入ったばかりの新人だが、宜しく頼む。其方の人は?」


「ライン=ドグラス。ダンジョン探索者上がりだ。」


ロッカがそれを聞き納得した顔をする。


あんた。探索者上がりだったのか。道理で色々と因子を持ってる訳だ。


「貴様…見たのか?」


「いや沢山因子が有るって事しか分かんなかったよ。と言うかゲームじゃ無いんだ。全部を纏めたデータバンクとかそう言ったのが有るとしても、アクセス権限なんて普通無いし、因子は個々で形や内容がある程度バラつくせいで因子の数とそれが発するエネルギー量くらいしか確実な情報なんて獲られないし」


「なら良い」


「でもダンジョン探索者か。お宝はどんなのが出た?」


「色々とだが自分が欲しかった奴は出無かったのでダンジョン探索を辞めたのだ。宝は大抵売ったから手元には無い」


「さようで、キリカの方は因子数は少ないな。差し支え無ければ内容を聞いても?」


「普段使いしてるのは水系因子だな。他にも有るが今は良いだろう」


「アドバイスが言えるがどうだろうか?」


「…後言えるのは【剛体化】だ」


「ふむ。【剛体化】ね。確か回転系が弱点だったが、どんな使い方してんの?」


「さらっと言ってくれるな。体の表面を壊れなくさせる形だ。体内に使ったら生命活動も停まるからな」


「うーん。その形だと、貫通系相手する時キツくないか?後、炎の熱とか雷の感電とかで押してくるタイプとか。」


「…容赦なく言ってくれるな…」


「んで、こっからがアドバイス。【回転】の因子と、【絶対行動】の因子を取れば今上げた弱点は解消出来るぞ」


「それは本当か?」


「そだね。只それを獲る為の試練がアレだった気がするけど」


「嫌な予感がするが、後で調べて挑戦してみるとするか」


「それが良いよ。自分で調べた方が自分でやった感が有るし」


「…なんか知ってる風だな…」


「そりゃあまあね。挑戦出来そうな因子は粗方挑戦済みだから今の三つの内なら【絶対行動】はクリア済みで持ってたりするな。意思を体と別の場所と言うか領域に同時に存在させて体が洗脳とか強制操作された時とかも普通に構わず行動出来るからかなり重宝するね」


「ほう。それは有用そうだな…剛体ってのは概念的には理論上最高硬度なのに全身に使ったらその性質故に生命活動も停まってアウトだからな。それを無理矢理動かす方法が有るなら全身使用も可能に成るか」


「実際本来なら全身使用で全身○○にって奴に大抵共通する問題なはずなんだが、何らかの形で考慮し無いかその設定が表に出ないパターンが多いな」


「全身水化ならまだ特に特殊な理屈は要らないと聞いた事が有るが」


「詳しく」


「要は肉体を水化してるだけで血液や生体電気等体中で蠢くものを水で代用してるらしい。生体電気を水でなんで代用出来るかと言うと、固体では無く液体だから循環するのを疑似的に再現出来るとか。だから結果的に使用者のレベルが低いと生体電気を代用してる部分の水の速度が遅いから行動が遅く成るらしいが」


「そこは精神だけは水化し無いで良かったんじゃ無いかな?」


「…水化した体へのいわゆる行動指令をどうするんだ?」


「サイコキネシスが有れば問題無い気がするけど」


「そのサイコキネシスを行う思考が鈍化するのだから鈍いのは変わらないし、動かす手法だけ有っても意味ないぞ、それなら生体電気を水で代用するので事足りるし」


「むう。でもその理屈ならいわゆる固体系に成る奴が駄目なだけですよね。液体かそれに準ずる様に動かせる奴なら問題無いはずです」


「なら雷化も大丈夫なんじゃねーか?それなら思考速度も落ちないだろうし」


「…血液を高熱の物に変化させて大丈夫なのか疑問なのだが」


「多少の熱量に当てられたくらいじゃダメージなんて負いませんよ」


「逆に言えば一定以上の熱量を持つ雷に成ったら不味いかも知れないと言う事だ…まあ、血液の働きを雷を使った別の方法で代用し、それが終わったら血液を生成するなら可能では有るけど、そもそも体を構成するタンパク質は四十度か其処らで凝固して変質してしまうと言う話が有ってだな」


「ならそれも雷化が終わると同時に生成すれば良いんですよ」


「…実現させるために必要な技量が多すぎる訳だが」


「…まあそれは確かに」


そこで部屋のドアがノックされた。


とりあえずどうぞと言う。


すると、先ほどの少佐が入ってきた。


「話は弾んでる様ですね。施設の案内のついでで少しだけ時間が確保出来たので今から習得設備に行きますよ。」


「ああ、はい。解りました」


「其方の二人も来ますか?キリカさんの技能習得が今回の目的ですが」


「そない簡単に因子って手に入りますかね?」


「いや、要は順応が出来れば良い。それを促進する設備が有っても不思議では無いだろう」


「そないもんですかね。ならついでに着いてく事にしますわ」


「此方も興味が有る。同行しよう」


「解りました。とりあえず行く事にしましょう」


そして部屋を出て移動する。ある部屋に入ると水に辺り一面が満ちている、湖畔に着いた。エネルギーがそれらに濃く充満して水の力に満ちていた。


「空間系因子で細工してありますが、ここが水の因子を手に入れる為の部屋です。ですがキリカさんの場合は水因子を持っているので、次の部屋に行きましょう、ですが、先に水の因子の力を纏う事をお勧めします。次の部屋は暑いですので。」


そして皆水の因子を起動する。…後の二人も普通に持ってたのかよ。と思わなくは無いが。


…次の部屋は至る所に火が燃えている焼け野原の部屋だった。…燃える物が無さそうなくらいがらんとしているが、どう言う事なのだろう?


「さて、先ずは火の因子からです。此処の火は大した威力は有りません。水の因子のエネルギーを纏った状態で火の中に手を突っ込んで暫く待機しながら火のエネルギーを取り込んでそれに順応して下さい。」


「中々に強引な方法に見えるが。」


「先の部屋で水の因子を手にする上でやることです。問題は有りません。…と言うより、火や炎に耐性を持たずに火や炎に間接的に長時間触れ合うなんて面倒だし時間が掛かります。なら水因子で火や炎に直接触れても大丈夫な様にして、その状態で長く火や炎に触れてエネルギーを取り込み続けて順応すれば良いと言う訳です」


「火や炎に順応する条件がのがそれらの至近距離で一定時間エネルギーを回収する事なら、もう直接触れても大丈夫な様にして直接エネルギーを大量に摂取してさっさと順応してしまえ。…と言う訳かいな。言われてみれば成るほどと言わざる獲ないわな」


「なら始めます」


「はい、どうぞ。では私達は暫く待機ですね。」


「と言う事はだ。次は冷えた水なり氷なりの場所に行くって事かいな?」


「よく分かりましたね。そうなります。その環境に対処出来る状態を対極のを交互にやることで、徐々に延ばして行く形に成ります。最初側のは一般的な設備でも普通に可能ですが、途中からはそう言ったレベルは超えてきますから持っていたとしても、やっていく事を進めます」


「そう言う事ならやることにしますわ」


「同意する…金は取らないと言うことで良いのだな?」


「ええ。先行投資とお受け取り下さい」


「解った。ならやらせて貰う」


そして幾つかの部屋を因子を習得しつつ進むのであった。


それが終わった頃にロッカが、


「今の所有因子の成長具合と手に入れた因子の物を見させてくれないだろうか?」


「見て意味が有るのか?」


「…まさか貴様…」


「誤解の無い様に言っておくと、データバンクなんて物が有ってもアクセス権限が無いとは言ったが、自分で因子を大量に見てデータを大量に集める事くらいなら出来るからね。見せて欲しいのは増えた因子とかの強化後の状態と言う訳や。そういう差異データは集めといて損は無いからな」


「…つまり色々な因子の習得を試したのは色々な因子の基本型の形を知るためか」


「そう言う事やねラインさんのは一部しか類推出来る因子は無かったんやけど」


「つまり希少な因子を持ってる奴のその因子の内容が解る訳では無い、と?」


「そうなるんや。と言うかかなりデータ集めたはずなのに類似の奴がそんなに無かったんやけど何持ってるんや?」


「それは話せないな」


「さようで、ならとりあえず…。えと、少佐さん。次は何すればよかとか?」


「そうね。連続銀行強盗犯が来る可能性の有る銀行で張り込みでもして貰いましょうか」


「そんなの警察の仕事ですやん」


「その警察の人員が足りんから手伝ってくれって来てるのよ。…流れを説明すると、銀行の設備資金の問題で【転移】封じが完全じゃ無かったのを突かれて、金を転移させて奪うと言う手口が行われていたのだけど、【転移】対策のされてる物の中に金を入れてたら今度は転移対策のされてないギリギリの所に【転移】して其所から物理で強行突破をして金を奪う様に成ったのよ。で、人員がそれなりに居る様で、何カ所か同時にやって来る。それによって此方の人員の集中を避ける狙いだと思われるのだけど、使う因子の形跡から因子を割り出せて、それによってその因子所持者へ捜査を掛けられるの。だから基本的には犯人達は今回の肝の【転移】系以外は使ってこないから、武装としては銃なり爆弾なりに成る。だからどうにか【転移】封じが効いてる場所で確保しなさい。最低追い返せればそれで良いわ」


「なる程。人員をばらけさせる必要が有る上で、何処の銀行に強盗犯が来るか解らないので、全部をそれなりに護りたいがそうするには動かせる人員が足りないから増員として声が掛かった訳ですか。でも、ガチガチに防衛を固めたら無理だと判断されて他国へと移動すると思いますが」


「だから増員分は銀行の一般客に紛れといて欲しい見たい。で、監視網に掛かり次第駆け付ける訳ね」


「ふむ。ですが、かなりスピード勝負に成りますよね。【転移】対策の場所はそんなに広く無いでしょうし。後、何処に来るかも解らないと言う話でしたが、爆弾で破壊出来る程度の金庫辺りで護られてる場所が怪しいかと。つまり防衛に予算がそんなに掛けられて無い場所ですね。実際回数を繰り返してるのは大量に金を保管しているような大穴を狙わず設備が其所まで行き渡ってない小さい銀行を主なターゲットにしているからなはずですから」


「一応大きな銀行にも強盗犯は来てるわよ?」


「普通奪った金が目標値に達したなら回数繰り返す迄も無く逃げるべきです。まあ、余りにも上手く行くものだから調子に乗っている可能性も有りますが、金が目標値に達してないとしたら恐らく様々な場所から少しづつ奪うのを繰り返してると見るべきかと」


「だとしたら次は何処に成るかしら?」


「それを判断するには爆弾で壊せるレベルの設備の銀行の場所がデータで解れば良いんですが、そんなデータあったら犯罪組織にハッキングされて見られて仕舞うと一大事ですよね」


「そうね。そのデータはあるけど…手際の良さを見るにそれ見られたっぽいわ」


「…駄目じゃ無いですか…」


「…でもそのデータのお陰で次の犯行の場所の割り出しは出来るわ。捕まえれる可能性は高いと見るべきよ」


「そのデータを基準に動いてるとバレた場合を相手が考慮した場合を考えましょう。自分なら盗めるポイントの全部の場所へは盗りに行かず、三割の場所は残した状態で引き上げます。そのデータを見られたと警察側が気付いていた場合全部の場所へ盗りに行ったら終盤は盗るのは待ち伏せされてる可能性が高く、捕まる可能性が高いからです。なら自分なら何処に盗りに来るか解らないランダム性をそれなりに残しつつ、盗れるだけ盗りたいなら七割盗ったら引き上げますね」


「一回盗りに行った場所にまた来るかも知れないわよ?」


「万全を期すなら同じ銀行に二度も強盗には行きません。わざわざ一回目の強盗で警備が厳しく成ってる場所に行く様な物ですからね」


「…犯罪者の思考がよく分かるわね?」


「但の思考実験をやってみただけです。そう言うのをやってた訳では無いですので誤解は簡便してください」


「なら良いけど…さて、データベース見に行くわよ。そうすれば大体の見当が付けられるはず」


「ですね。行きましょう。でも新人に入る権限有りそうに無いんですが」


「…そうね。なら私が見てくるわ。だから貴方達は資料室から今回の銀行強盗の範囲の地図でも貰ってきて頂戴。今までに銀行強盗された銀行と設備に一定以下の金しか掛けてない所のニパターンが見れるはずだから、今回の目的は果たせるはず」


「解りました」


そして後でこの部屋に戻ってくる事にして一先ず資料室に向かったのだった。

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