第3話 景虎、ナンパをする

ああ、なんか前髪なかったらなかったで恥ずかしいな。なんかめっちゃ見られてるし・・。


僕は、昨日信長君にされたように後ろ髪を中盤から結んで、学校までの道のりを歩いているのであった。そうして、観衆の目に晒されてるのが嫌で少し早歩きで教室までついたのだ。


 すると、廊下から見えた教室では、信長君は、やはりチャラ男・・・。もとい、リア充はクラスの何人かと楽しそうに雑談しているのであった。


「景虎遅いじゃねぇか」


 廊下から、教室のドアに差し掛かった時に教室の真ん中からこっちに来た。


「信長君おはよう。それよりなぜでしょう。ここでも、なぜか多数の人からの目が刺さるのですが・・・」


 朝からの視線が何なのか、相談するのはやはり相談できるのは、信長君しかいないと思い言ってみるのだが、このチャラ男・・。もとい、リア充は笑っているだけであった。


「そりゃ、お前が顔見せてるからじゃねぇか」


「やはり、こんな醜態をさらす髪型はやっぱダメだったんじゃないですか」


「おい、お前は、自分の顔をなんだと思ってるんだ。どっか、顔の半分陥没してるわけでもないし。目が細すぎるわけでもないし」


「いや、だって、男らしい顔してないんですもの」


「・・・。まぁ、いいじゃねぇか。それより忘れてないんだろうな」


「はい。大丈夫ですよ。女の子をナンパするんですよね」


「はぁーー。もうお前にツッコミ疲れた。まぁ、今日の放課後な」


「ツッコミ要素ありましたっけ・・。まぁ、分かりました」


 ちょうどチャイムもなったところで、僕らは、それぞれの席に着いた。


 先生が入ってきて、こっちを見てなんか驚いていたけれども、なぜだか全くわからなかった。隣では、信長君がクスクスと笑っている。なぜなんだろう。僕は、少し考えたが、全然分からなかった。


 そんなこんなで、授業は、どんどん過ぎていった。休み時間は例のごとく、信長君に話しかけられる以外に誰とも話すことはなく、僕は、休み時間などはラノベを読んで勉強していたのだった。


 そして、信長君の言っていた女の子に会うために僕らは、隣のクラスのB組に赴くのだった。


「俺は、廊下で待っとくから。行ってこい」


「はぁ。分かりました」


 僕からしてみれば、この状況は非常にまずかった。僕は、ほぼ琥珀姉さん以外の女性とは、話したことがない。信長君に言ったようにいけばいいのかな。いや、やはりそうに違いないか。しかしながら、立ち止まるしかなかった。


「おい、どうした。早くいけよ」


「いや、このクラスの誰なのかなと思いまして・・」


「ああ、それもそうだな。あいつだよ。結城千代」


 そう言うと信長君は、教室内の隅っこの席にいる綺麗な少し紺色がかった長髪の女性が優雅というべきか、なんというかとりあえず本を読んでるボッチだった。


「じゃあ、行ってきますね。信長君」


「おう」


 僕は、信長君の見送りを経て、読書ボッチのところに行った。


「あの、ちょっといいですか」


 僕が話しかけたら、読書ボッチはこっちを睨みつけた。わぁ、怖い・・・。そりゃそうさよな。僕だって、ゲームのいいところで知らない人に声かけられたら、怒るもんな・・。


「なんでしょうか」


 僕は、ひとまず友達申請をしないといけないという信長君の指令を無視しては、いけないと心の中で決意した。


「あの、僕と友達からでいいので、付き合ってください」


僕は誠心誠意で頭を下げた。


よし、出来た・・・。これで・・・。


 やっとの思いで、友達申請したのに、周りはなぜだがざわついていた。なぜだろうか、普通にやったつもりのはずなんだけど・・。


「そんなイケメンだからって調子乗ってるの。付き合うわけないでしょ」


「えっと・・・・。イケメンとは、誰がでしょうか」


「はぁ・・。ひとまず、あなたと付き合う気持ちなんてこれっぽちもないから」


「はぁ、そうですか」


 僕は、きっぱりと断られてしまった。周りは、なぜか笑うものいた。やはり、そう甘くはないのだろう。難しいものだ。


 僕は、その場から逃げるように廊下にいる信長君のほうに走っていった。すると、待ってくれていた信長君は、なぜだか怒ってるように見えた。


 やっぱ、逃げ出した僕を怒ってるのかな。


「あの・・・。友達になれませんでした・・・」


「様子を見てたら分かってる。で、なんて言ったんだ」


 信長君は、怒ってる顔とは反面、なんとも優しい口調であった。怒りは、見え隠れしているのだが。


「僕と友達からでいいから付き合ってくださいって言ったんだけど・・・」


 とりあえず、自分の渾身の友達申請を話したのだけれど、やれやれという顔をしている、我が友達のチャラ男。


「やっぱな・・・・・。だから、それは告白の時使うんだよ!」


 少し間が相手からやはり怒られた。


「間違っちゃいました・・・」


「で、なんて言われたんだ」


「なんか、イケメンがどうとか・・。誰のことだったんでしょうか・・。まぁ、ひとまずダメでした」


 僕が、深く言葉の真意を考えていると、信長君は深くため息をついているようだ。


「やっぱ、お前じゃ難易度が高かった・・・か・・」


 そう言うと、僕の肩をポンと手を置いてから、Bクラスに入っていった。遠目から見ていたが、なにやら読書ボッチに話しているようだ。


やはりさすが。チャラ男だなー。ナンパはお手の物ってやつか。


 すると、信長君が僕とは全く違う雰囲気でこちらに歩いてきた。


「景虎、昨日のファミレスに行くぞ」


「えっ、でもあの子は・・・」


「いいから行くぞ」


 僕は、こうやって半ば強引にファミレスに連れてこられたのである。


「あの・・・。僕・・・重度の金欠なんですけど」


「まぁ、必要経費だと考えろ」


「そんな・・・・」


 信長君は、外を眺めるのが好きなのか、昨日のように頬杖を突きながら外を見ている。すると、急ににやりと笑った。


「よし、ちゃんと来た」


 立ち上げると、今入ってきた客に手招きをしている風景を見てしまった。


「あの、久我君。私あまり無駄な時間を作りたくないのだけれど・・・」


「ああ、無駄にはしないさ、まぁ、座れ」


「はぁ・・」


 僕の前で信長君と会話してるのは、あの読書ボッチである結城千代である。渋々席に着いた。


「てことで、景虎と結城。まずは、自己紹介だ」


「えっ、いきなりですね。一年C組の臼井景虎です」


「一年B組の結城千代。で、これは何のつもりかしら」


「まぁまぁ、まずは景虎が謝りたいことあるらしいからな」


「(えっ・・・。僕ですか)」


「(まずは、あの告白まがいのことをだよ)」


「(そういうことですか。分かりました)」


 僕らは、ひそひそと話していると、千代は席を立とうとしていた。


「やっぱ無駄な時間じゃ・・・」


「すみませんでした。さっきは・・・。僕はただ友達になってほしかっただけで・・・。ちょっと言い方分からなくて、ラノベのセリフから引用したら、間違ってたっぽくてですね」


「臼井君も、ラノベ読むの?」


「えっ、最近読んでますけど」


「そうなんだ・・・。私も読んでる。・・・・許してあげる。代わりに・・・」


「代わりに?」


「私と友達になりましょう」

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