第59話 力の源



「前に言ったろう? 度の過ぎた力と」


「ああ、だがそれがどうした? 」


「この力を人が望んでいるとしたらどうだ? 」


「人が、神になりたいと言うことか? 」


「いや、そうではなくて、「そういう力を持つ者がいて欲しい」という望みだよ」


「なるほど、で、それとどういう関係があるんだ? 」


「人のその思いが、我々を作るのじゃないかと思うんだ」


「思いが、神を作るのか? でもここの奴らは信じないだろう? 」


「ここの者は言うなれば「助長する者」だ。一部の者は生きている間、神の名をかたり、一般の人間を言葉巧みに操り、甘い汁を吸ってきたんだろう。だから地獄の責め苦の後、ここに送られた」


「それはわかる、が・・・それでも神も鬼も信じないとはどういうことだ? 」


「歌にあったじゃないか、彼らのすべては「自分」なんだ。誰しも自分は大事だろうが、ここの人間は「全てに己が先に」なんだよ。困っている他者いようが関係ない、あの歌だ・・・本当に歌詞の通りだ

ここの人間が生きている間、その揺るぎないほどの力に、弱い者は引っ張られる。扇動される、思いも願いも、それが・・・」


「俺たちの! 神の力の元だというのか! それは違うぞ! 断じて違う!! 」


海は叫んだ。朝鷹が間違っていると言うわけではない、ただ強烈に

「そうあって欲しくない」という気持ちしか無かった。地獄で罪を反省もしない、そんな人間と自分たちが密接な関係があるという朝鷹の考えは、たとえそれが真実であっても、海にといっては受け入れることなど、決してしたくないのだ。


「では何故彼らが存在しているんだ? 何故今までの神々も彼らのような人間を排除しなかったのだ? 出来るはずだ、出来たはずなんだ。それをそのままにしていたのは何故だ? 理由があったはずだ、大きな理由が。排除しなかったのは出来なかったから、それは自分たちの存在そのものを消してしまう可能性があるから。

これこそが理由なんじゃないのか? 」


朝鷹は、頑ななまでに引き下がらなかった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る