第46話 赤き衣


それは神の化身ではないかと人々の間で話されていた。


 一見みすぼらしい姿の、年を取った男の占い師であったが、近隣で当たると評判となり、土地の有力者などから接待を受けるようになった。

もちろん良いことばかりを言うわけではないので、不吉な予兆の場合は、置き手紙のように予言を書き、その地を去った。このような事をする知恵者でもあったため、多くの人が喜んで彼の話をし、噂が遠くまで飛んでいくようになった。

 

その評判がとうとう帝の知るところとなり、予言者は帝の前であるならばと、良いことも悪いこともすべて正直に話した。

この後、多くが彼の予言したとおりであったので、褒美として帝は上等な赤き衣を身にまとうことを許し、願いである「国々を回ること」を許したという。



「予言者に化けて・・・どうなさるのですか? 」

「あの、出来ればそのように堅苦しい言い方でない方が助かります、きっと生まれてからの年もそう変わらないようですので.

同じ鬼の仲間と思ってもらってかまいません」

珍しく恥ずかしげであった。

「そうですか? 」

海はこの若き神が本心からそう言っているのを感じていたので、そうしようと思った。


「色々な神がいてな、案外俺たちを見下してはいないから、きっとお前も気の合うやつが出来ると思うぞ。人間界に行ったとき、そいつと会うのも楽しみなんだ」


他の鬼と同じことが自分にも起こったのだと海は素直に思った。

そして、本当に思ったのであるが、


「この神には、ずっとこうやって接しよう。もしかしたら、かなり格が上の神なのかもしれないが、気にしないでおこう」


そう心に決めた。


「海、男を、赤い衣の占い師に化けた私の所につれてきてくれないか? 恋人はあまり外には出ないようにしているようだけれど、なんとか一人になった時に話しかけてみる」


「わかった」


 何を言うかは聞いてはいなかったが、とにかく言われる通りにした。 








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る