第32話 同じ
「やめろ! やめろ! そんなことで命を絶ってどうするんだ! 」
「その子はまだ幼いじゃないか!!!」
「日本人同士だろう? 何故こんなことを! 」
「やめろ! やめろ! 何をするんだ! 子供同士でもやっていいことと悪いことがあるぞ! そんなことをしたらその子は死んでしまう!! 」
今度はずっと叫び続け、その声は次第に小さくなっていった。
「やめて・・・やめて・・・やめて・・・
やめて・・・こんなもの・・・見たくない・・・
やめて・・・」
男は神鬼の方を懇願するように向いたが、
今度は急に大声で
「やめてくれと言っているじゃないか!!! 見たくない!! こんなもの! 私たちは歴史の真実を知りたいのではない!! ただ神の存在を! そのことだけを!! ただそのことだけを!!!
それなのに!!! うわあ!!! やめてくれ!! やめてください!! 謝ります! あなたの友人に毒を盛った事をやっぱりおこっていらっしゃる! すいま・・・
やめてくれ!!
謝っているじゃないか!! 」
「神は全知全能です。知ることも能力の一つなのですよ」
騒がしい声に、神鬼が穏やかに答えると
男は我に返ったように静かになったと思ったら、今度はバタリ幾重にも重なった枯れ葉戸枝の上に倒れた。目は見開いたまま動かず、体も全く動くことはなかった。
「先に「知る」ことを教えた方が良かったかな。でもそんな問題ではないだろう。結局は神の「能」の部分にしか魅力を感じない愚か者だ、だが極端に残酷な人間でなかった事は認めよう。しかしそれは閻魔大王様がお決めになることだ」
神鬼は自分の前で倒れた男を眺めていると、今度は頭上で
「ピーヒョロロ、ピーヒョロロロ」と鳶がゆっくりと旋回し始めた。
「朝ではなくもう昼に近いですが」
そう言いながら、少し楽しげに上を見て、今度は自分の身を正すように、着ているものや、リュックを少しだけ引っ張ったりした。
それが終わるのと同時に、急に鳶が猛スピードで降下してきた。
「そんな早さで鳶が飛んだら、別の鷹だと思われますよ。
大神」
神鬼の明るめの声がした。
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