第30話 神の資格
「痛かったろう、ごめんなさい、私が悪かった」
神鬼は根っこも顕わになった木々達に謝っていた。
「さあ、土達も、細菌達も、虫たちも元の山に戻ろうか」
神鬼がそう言うと、龍が飛ばした木々達が一斉に山々で浮かび上がった。そして土や虫たちは乗り物のように木の根に移動したが、いくつかの土くれは浮かび上がっただけであった。
神鬼も横でその様子を見て
「もしかしたら・・・別の場所に行きたいと思っているのかい? 」
そう言うと、土は小さく動き、何本かの木々まで体を揺らし始めた。
「ハハハ、そうか、君たちは自分たちが自由に動くことが出来ないから。そうだね、痛い怖い思いをさせてしまったから、この近辺の山にいきたいのなら、私が山の神々に頼んでみるよ。でも悪いけれど、今回一度だけだよ、よく考えてほしい。新しい土地で暮らすのだから」
神鬼がそう言うと、何本かの木々と土は元々あった場所へと戻り、何本かが中に浮いたままだった。
「すいません、山の神々、お願いがございます」
神鬼がそう言うと、空に浮いた神鬼と木の回りに、動物や、虫や人が集まった。
「神鬼様・・・知風の事は本当に申し訳ございませんでした」
山の神々はそれぞれ神鬼の前で頭を深々とお下げになられました。何故なら草の神と同じように「毒を作ったであろう人間」に気が付かなかったことを、自ら責めていらっしゃったのです。
「毒は薄めれば薬になります。薬師の部分も彼らにはあったのですから」
「いえ・・・龍になった男の心はあのようですから、きっと毒を作った者はすべからくそうであったはずなのです。随分と前に大神様が「このあたりに変わった人間はおらぬか? 」とわざわざ来られた事があったのです。そのときに私たちが話しておりましたら、今度のようなことは起きなかったでしょう」
「人間の事だけにかまってはおられないでしょうから、仕方の無いことです。ですが・・・申し訳ないのですが」
「はい、わかっております。この木と土達とは私どもが話します、神鬼様は・・・
お忙しいでしょうから」
「すいません、それではお願いします」
そう言って、神鬼は神々の集まった場所を離れ、最初の山には帰らずに、「元の山に戻った木々と土」に会いに行った。
「大丈夫かな、ああ、少しだけ水がいるね」
と手を木の根元に当てると、一緒に帰ってきた周りの土が、大雨の後のようにじっとりと濡れた。
「本当にごめんなさい、しばらくしたらまた来るよ」
と言いながら、何本もの木々達の所を謝って回った。
そして神鬼も龍のように飛びながら呟いた
「木々の声も聞こえるようになっているはずなのに」
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