第27話 受け渡し


「私が神に・・・・・なれるのですか! 」

「すぐさまにと言うわけではもちろんありませんが、とりあえず、私が持っている力をあなたに差し上げますので、試してみてください」

「試す? 」

神鬼はまるで手慣れた営業マンの様に自分のペースにこの男を引き込んだ。そして軽く片手の掌を彼の方に向けた。


「おお! おお!!! 」


何も見えはしなかったが、男は自分の中に何か全く違う物が入って来ていると思った。それは体の隅々まで行き渡り、さらに自分の体に力の膜のような物が何重にも、何百にも包んでいくを感じた。


「ああ、まるでミサイルが飛んできても跳ね返すことが出来そうだ! 」


「ふふふ、避けることの方がたやすいですよ」


「ああ・・・そうでしょう、そうでしょう」


男は年を取ったままだったが、老眼であった目は完全に幼い頃に戻り、その視力で、神鬼をはっきりと見続けた。自分にはずっと変わらずあふれんばかりの力が注ぎ込まれているが、次第に神鬼の目の力がなくなっているのを感じていた。


「今は・・・もしかしたら私の方が力があるのかもしれない」


そう感じていると、不意にその力の流入が止まってしまった。

男にとっては、こう考えたのが原因と思ったが、神鬼はそのことには何も触れず


「私の力を渡しました。今なら何にでもなれますよ、その姿を人に見られては困りますが。この山であれば、誰も気が付く事は無いでしょうけれど」


「何にでも・・・なれるのですか? 」

「思いのままに」

「でしたらば! 」

男性は木々の隙間から上を向いた瞬間、

大きな龍へと姿を変え、

そのまま天高く登っていった。


神鬼は全く表情を変えることも無く、ただ首を少し上の方に傾けただけだった。




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