第26話 積み重ね
「昔、私の祖先は神官でありました。そしてその神官の祖先が一度だけ「神に出会った、神は本当にいらっしゃる」と書き残していたのです。その言葉を私たちは深く信じ、研究してきました。
そして赤鬼を見た者が大勢現れました、だと言うことは神もいる、それは単純な導きです。
そうしていると
「自分は神だ! 」と言いながら狂ったように歩き回る人間がいるという噂を聞き、祖先はその人間を介抱してくれるようにと、地方の知り合いに頼みました。これも昔の話です。ですが、このことがさらに私たちの研究を確実な物にしてくれました。数日とたたずにその人間は亡くなったそうですが、驚くようなことを次々と言い、
「今の大神など、神として失格だ、愚か者だ! 何故地獄の鬼の部分を次の神となるべき存在に入れるのだ! 神界を潰すつもりなのか」
と叫んだそうです。
そしてその人にある薬草を処方した際、神であると言う人物が色々なことを話し始めたのです。神々のこと、地獄のこと、また一つの食べ物をとても好んで食べていたため、これをずっと作り続けることにしたのです。
これと似たことがいくつかあり、その都度、私たちは知識を増やしてきました。そして私たちはこのことを長く続けていたため、人間の姿をしているが、これは鬼である、ということ何となくわかるようになってきました。
やがて「強い何か」を感じる人間が現れたのです。
そしてその人物にあの食べ物を食べさせたところ、気に入って食べるようになりました、徐々に彼からあなたのことを聞いたのです、そのことはおわかりでしょうでしょう」
「ええ、わかっています。それより、
何代にも渡り、時にはあなた方の研究を狂気扱いされたこともあったでしょう。
何か私におっしゃりたい事がおありではないのですか? 」
「もちろんあります・・・
これだけ私たちが深くあなた方を研究していたのも関わらず、一度たりとも姿を見せては下さらなかった!
どうしてなのですか? 決してあなた方を蔑ろにしているわけではありません、むしろ敬意を持っております、生命の誕生の不思議、そして神という存在の不思議、そう、何故なのでしょうか?
あなたは生まれながらの神であり、命は永遠に近いものがあるはずです。でも私たちは生きることも運命に左右され、思い通りになど決していきません、どうしてなのですか? 」
神鬼はふと先輩との会話が浮かんだ。
「では神になりたいですか? 」
「え! 」
その顔は、出会って数分しかたってはいないが、この男の一番うれしい顔に違いなかった。これを受け入れないという選択は、彼にはほんの一分も無いように神鬼には見えた。
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