第25話 歴史の監視者
「そう、やはりあなただった、夭折の若き建築家。そう、私は、私たちはずっと、何百年、いいえ千年近くずっと世の中の小さな動きも見逃さなかったのです。
数ヶ月前、地方で数日間、あまりにも鳥たちが騒がしく鳴いているという情報が入ってきたのです。しかも公民館の周りだけでです。おかしいと思ってもう一度調べ直しました。最初は「ああ、あの建築家の」と私も思いました。しかしそう、私たちは「すべてを疑ってかかれ」というのが家訓でした。もちろん血筋でないものも今までたくさんおりましたから、それが一層研究をより深い物にしてくれました。
そう、あの時代、いるはずなどないのです。高度経済成長期のまっただ中で、一本の木を残す建築など考えるはずもない。
そして調べていけばいくほど、この建築家が急に現れた事がわかりました。
まるで突然「付け足されたように」です。
私は・・・・・どれだけ歓喜したでしょう。歴史を変えることは、神の中でも最高クラスの方でなければ出来ないことです。そして・・・この一連の出来事がどこかやはり「若々しい感じ」がする。
そうだ、これこそ「眠りについていた若き神」が目覚めたのに違いない! あの知風という神の僕が「自分の友」と言っていた、やがてこの国の大神となられる神が今現れたのだ、と。
ああ、人間の長い歴史の中で、この私がこの名誉を受けることが出来る! 何とうれしいことでしょう。
確か・・・・神鬼様とおっしゃった」
神鬼はゆっくりと話し始めた。
「そうです、あなたの仰る通りです。私はやがてこの国の大神となります、今はまだ修行中の身です。ですが、だからこそ、と申し上げた方が良いでしょう。どうしてこのようなことをなさったのか、直接会って聞かなければならないと思いましたので」
「あ・・・その・・・お友達に話してもらうために・・・その・・・毒を」
「いえ、そのことを激しく責めるつもりはありません、大した毒でもないのですから」
「あれで・・・大した毒ではないのですか・・・」
「残念、と思われるかもしれませんが、私たちはそういう体をしておりますので。それに、毒のことはあなたたちの研究の一部でしかないでしょう。私がお聞きしたいのはもっとその根幹にある物です。どうしてここまでの研究を、ほかの神々に気づかれぬように完璧におできになったのか。それが知りたいのです」
「それは単純なことです!! あまりにも単純な事、
あなた方の存在の証明以外の何物でも無い!
神と呼ばれる方々が本当に存在し、それこそ「神がかり的な力」を持ち、生き続けていることの証明です、そう! 私は!! 何と幸福な人間でしょう!!! 」
静かな山にこの声が吸い込まれた。
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