第21話 全国行脚
「不要不急の外出を禁止されている今にですか? むしろそんなことをしたら、敵にそこを責められるのではないですか、先輩? 」
「確かにその可能性はないわけではない。でも地方のホテルや飲食店が困っているのも現状だ。それに言っただろう? 今が好機なんだ。
俺としては「君の存在を知らしめたい」っていうのが何よりも希望なんだよ。
今まで俺は一人だった、だからどうしても限界があって、
「自分のところまでは来ない」って思っている奴らが、ゴロゴロと、動き回る石のようだった。そいつらに止まってもらいたいんだよ、そうすれば上からトンカチで叩けるからね。君を見たら、勘がいい連中だから震えあがるだろう」
「そうですかね」
「君にはとてつもない落ち着きがある。それと俺よりはるかに高い能力もある。まあ一緒に行ってそいつらの顔が少しずつひきつっていくのも見たいけれど、それをやっては本当に「経費の無駄遣い」と責められるだろう。でも行くにあたって、コロナにかかっていないか検査を受けてもらうようになるけれど」
「それは構いませんよ」
「君が会いたがっていた例の団体にも行くといいよ」
「どうもありがとうございます、何もかもお見通しですね」
「興味があるのはいいことだよ、君なら何かつかんできてくれるかもしれないと思って」
「わかりました、予定はどうしましょう? 」
「それも君が立てていいよ、だがもちろん俺たちのブラックリスト優先にしてほしいけれど」
「わかりました」
神鬼は予定を立てることにした、そして一週間後、例の団体の代表者に直接会う約束をメールで取り付けた。
だができるだけ短時間で終わらせなければいけないのは、必然となっていた。
「やっと終わりました、神鬼殿」
「ご苦労様でした、医の神」
知風がいなくなった宮殿で、仕事終わりに神鬼は医の神と話すことにした。
「要は軽い自白剤のようなものですね、体がどうこうというというわけではなくて、少し安心いたしました。でもどうしてこんなものを作ったのでしょうか?
「神殺しの毒」を作ることに魅せられたのかと思っておりましたが、そうではないようですね。でも、これが作れたのですから、もしかしたらとは思うのですが」
「そんなことは出来ません、我々は毒だと分かればすぐにでも吐き出しますから」
「神鬼殿は極めて鋭敏でいらっしゃるから大丈夫でしょう。だが確かに毒であるので取らぬに越したことはない。知風の精神的な不安定さはこれによる所もかなりあったのでしょう。
とにかく知風一人、と言っては本当に申し訳ないのですが、ほかの神々、こと子を宿すことのできる女神などが口にしなくてよかった。知風も、ここにいて、織物の神と一緒にやって来た色糸の女神の一人に出会ったのですから、それは不幸中の幸いと申し上げて・・・」
「ええ、本当に良かった。以前に出会っていたら、きっと二人で一緒に食べていたでしょうから」
「本当にそうです。安心して子供も産むこともできます。
結果をまずは大神に報告いたします、それからほかの神々にも」
「そうしていただきたい、医の神、それでは」
神鬼が素早く去っていったあと、医の神は呟いた。
「あの男をどうなさるのだろう」
明後日は休日で、出発は来週の水曜日であった。
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