第17話 情報収集
神鬼が会ったのは赤鬼の頭だけではなかった。知風から教えられ、例の店に行こうとしている鬼を捕まえて、神鬼は話をした。
「毒だったんですか? ああ、確かに鬼によってはあれを食べると気分が悪いという者がいました。私は・・・大好きなので」
「あなたは何度目ですか? 」
「四度目です。ですがお前で結構ですよ、神鬼様」
そのような会話が多かった。
一方静養している知風のところに行くと、
「神界は大騒ぎだぞ、俺に会いに来て、みんな謝る神ばかりだ。何の神に会ったかさえ覚えられないくらいだ」
「叔父上達はみえたか? 」
「うん・・・・・風神様とご一緒にみえた。謝ってくださって・・・」
「それは良かった。雨降って地固まるだな」
「上手いこと言う、神鬼」
だが神々は逆に神鬼には会わないように気をつけていた。それは自分たちが責められることを恐れたためでもあり、また神鬼が知風と過ごす時間を奪いたく無かったためもある。
ある日神鬼が見舞いに行くと、畳の上の布団に座っている知風の横に、とても小さな動くものがあった。形といえば蜘蛛に近いように見えた。長い足、中心部にある小さな体。だがそれが水で出来ているようで、時々、シャボン玉のように虹色になった。
草の神様は、いつも虫の姿をしておいででした。
植物やそこにいる生き物たちを怖がらせてはいけないとの考えをお持ちで、会うたびにそのお姿を変えられておりました。
そして神鬼よりも何倍も年が上の草の神は、知風と神鬼にご自身が会って直接謝罪したいと思われたのでした。
「草の神、あなたが謝られることはない」
「いいえ、神鬼殿。神への毒が作られていたなど、全く気が付かなかった。熱心に植物を研究している者があのあたりに確かにいたが、学者の家系なのだろうとしか思わなかった。知風にも本当にすまないことをした」
「いえいえ良いのですよ、草の神。お気になさらずに」
いつになく知風は丁寧だった。それはこの一見優しいだけに見える草の神も、ずっと神鬼を受け入れなかった神の一人であったからだった。だが、このような事が起こってしまっては、神鬼に対し否定的になることも出来はしない。
草の神は頭を深々と下げるように、蜘蛛よりも足の長いこの生き物の胴体部分が、畳に触れるような低さになった。
「草の神、それは蜘蛛ではなく、ザトウムシなのですか? 」
「おお、知風、よくわかったな。お前も随分と知恵が付いた」
まるで仲直りした親子のように二人は話し始めたが、もちろんそんなことをしに来たわけでもなかった。
「植物の毒、虫の毒、魚、蛇、すべてを打ち消さないように調合してあるようです、神鬼殿」
「ええ、医の神がお調べになっているが、なかなか手強そうですね」
「人間が・・・これほどのものになっておるとは思わなかった。中には神を外された者の仕返しでは考える神もいるが」
「草の神はどうお考えですか? 」
「それはない。神を外された者は死にゆく者となるだけのこと。そこで終わりだ。そのような者達が動けば、我々にもわかる」
「完全に人の技のようです」
「本当に申し訳なかった。知風、質の良い薬草が手に入ったらここに持ってきてやろう」
それに対して知風が黙ってしまったので
「良薬口に苦しだ」
その言葉を最後に、草の神は二人の前から去った。
「神鬼、きっとお前が生まれたとき以上の騒ぎになっているぞ。神々が・・・こんなことってあるんだな」
「何が起こるかなど、大神にすらわからない。なぜなら過去は「ある」が、未来は「ない」、今から作るのだから」
「さすが神様」
「だが知風、なんだか肌つやが良くなった気がするが」
「そうか! わかったか! 他国の神が桃を持ってきてくれた! 寿命が延びるそうだ! 」
「それは人間が食べたらの話だ。お前は関係ないよ」
「やっぱりそうか」
神鬼は、知風の回復がやはりうれしかった。
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