第12話 風神雷神
知風は、風神様が自分の一部分からお作りになった。ともに仕事をなさる雷神様との連絡のためであるが、それ以上のお考えがあった。
それは若き大神の友となれば良いとの思いからだった。
今の大神は、それは大きな力と知恵を持つ御方であるゆえに、この方と対峙するような神などいるはずもなかった。
その大神が、何度かぽつりと自分に
「風神殿と雷神殿は本当に仲の良いことだ」
と漏らされたのを聞いた。
今の大神は神々の複雑な血筋から言えば、雷神の方と近しいので、それならば風神の自分がと、知風をお生みになられたのである。
そしてそれは、本当に良いことであった。
鬼の部分を持つ神鬼は、大人しい子供であった。一方知風は元気で明るく、恐れを知らず、むしろ「知風の方が神にふさわしいのでは」と皮肉を言う神々もいた。
そういう神々に対し、知風はかみつき回る犬のようになり、神鬼を守っていた。その様子を大神も風神雷神も止めることはしなかった。
一方の神鬼も、自分を守ってくれるからだけではなく、素直に知風が好きなようだった。
二人は仲が良かった。時々けんかもしたようであるが、それは些細なことで、すぐに仲直りも出来た。幼かったからかもしれない。
「いいよ、知風。僕のために君が悪く言われることはないんだから」
「偉いな、神鬼。俺がおまえだったら、「俺は大神になるんだ! 大人になったら、承知しないぞ」って言うぞ」
「そうかな? でもきっとそうならないよ」
「うーん、でも思うんだ。神様なのに、なんでほかの神を悪く言うんだろう、大人になったらわかるのかな」
「それはどうなのだろうね、どこに生まれてくるかなんて、僕たち神もわかりはしない」
「お前、そんな難しい事考えているのか? 」
「ちょっとだけ」
「ハハハハハハ」
そうして過ごしていた時の、突然の別れだった。
知風はずっとやり場のない怒りを隠し、この四百年を過ごしていた。そして時折人前に「神のように現れた」ことから、大神ではなく雷神の逆鱗に触れたのである。
「確かに今はわかっているんだ。雷神様が雷を降らせてくれなかったら、俺は大神に「消されていた」かもしれない」
「そうか、それをわかっているのならいいじゃないか」
「ちゃんと謝った方がいいかな・・・」
「一緒に行ってやるよ」
「子供扱いだな、俺の方が四百年、年上だぞ」
「だから、子供が出来ていたらそれ相応にやったさ。どうした? 例の天女は? 」
「それが・・・・」
「お前のことで、どうも天女に対しては印象が悪い」
「それは、かわいそうだぞ! 」
「お前も複雑だな、ハハハ」
若き神々も、人と似たところはたくさんあった。
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