第二幕 013話 進む道 見つからぬ道_1



 たくさんのものを手に入れた。

 一番ほしかった私の全ては、もうないけれど。そうではない色んなものを。


 変わらない。

 代わりには、ならない。

 何を手に入れても、どんなにそれが暖かくても、それらが私を満たすことはない。


 私の中には、ぽっかりと穴が開いている。

 深くて暗くて、どこまでも続く穴が。

 そこに放り込む。

 人間どもを。

 全ての人間を。


 全部、だ。

 最初はそうは思っていなかった。

 出来るだけ、殺そうと。

 私に可能なだけ、その穴に放り込もうと思っていた。


 だけど違う。

 ルゥナが教えてくれた。

 その時は衝撃を受けただけでうまく言葉にできなかったけど、今はわかる。


 出来るんだ、と。

 母さんは私に力をくれた。

 この力で、人間を殺しなさいと。

 私を苦しめ続けた人間をたくさん殺しなさいと、そういう意味だと思っていた。


 だけど違う。

 母さんがくれた本当の力は、それじゃない。

 全ての人間を滅ぼす為に、より多くの刃を作る。

 その為の力。



 全部、だ。

 この力をきちんと使えば、全部殺せる。

 殺すたびに皆が強くなっていって、みんな殺せる。

 この世界から人間全てを。

 絶滅させる。

 一人残らず殺す。それが皆殺し。


 私は馬鹿だから、使命を取り違えていた。

 憎い母さんの仇だとか、目の前にいる人間を殺すことしか見えていなかった。

 人間を殺して赤黒い血を流させるのは、それはそれで楽しかったけれど。

 楽しいだけじゃだめなの。


 ルゥナが教えてくれた。

 強い仲間を増やして、人間全部を殺そうと。

 全てに復讐出来るんだって教えてくれた。

 母さんが私に託した力の正しい使い方がわかった。


 だから、ルゥナのお陰。

 これから先に進む道は全部ルゥナのお陰だから、私はルゥナを……


「ルゥナを……」


 私は、ルゥナを。



  ※   ※   ※ 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る