第一幕 15話 雌伏の記憶_1
新大陸。
女神と魔神が争ったことで極寒の中に閉ざされたと神話に言われる大地。
人間の視点から見た場合。
長く人間社会の地図から失われていたその新大陸の発見……というか、旧大陸の再発見と言った方が正しい。
極寒に閉ざされたという神話は半分が本当で半分が間違いだった。
南北を分かつ山脈に隔たれて、その風土がまるで違う。
大陸の北側は、確かに人間が暮らすのに適さない土地。
南側については、むしろ暮らしやすほどの大地で、広くまばらに原住民の集落があるだけだった。
気候は、長い年月の中で変化していたのかもしれないが。
カナンラダ大陸と呼ばれるようになったそこを開拓する人間たちには、いくつかの勢力が存在する。
もともと人間が栄えていたロッザロンド大陸には、当たり前のようにいくつもの国家が存在していた。
その中でも最初にこのカナンラダへの航路を開き入植を始めたイスフィロセ。
それに追随する形で渡ってきたルラバダール王国。
ルラバダール王国は、イスフィロセより大きな国力を有する国家で、人口も多い。
イスフィロセが先行した権利を主張しようにも、今度は元の国力的にあまり強く出られない立場があった。
そんなイスフィロセとルラバダール王国の関係性の隙間に、他のアトレ・ケノス共和国、コクスウェル都市国家群と言った国々や、元々冒険者を取りまとめていた冒険者ギルトといった組織が。それぞれカナンラダへの開拓に乗り出して、各々の思惑で、新しい大地の生み出す利益を自国の物としようとしていた。
より良い資源を、より立地のいい港を。自分たちに都合の良い物流網を築いていく。
自分たちの懐に入れようと。
あるいは、他に遅れを取らぬようにと。
争うように人を送り、パンでも切り分けるように自らの支配下とした。
そこに元々住んでいた者たちの想いなど、広げられた地図のどこに描かれることもなく。
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