第一幕 04話 終わりの幕開け_4



 魔物を倒すと、その命の中から漏れ出たエネルギーの一部が殺したものの糧となる。

 結晶化する魔石とは別に零れる、ほんの僅かな力。

 無色のエネルギーと呼ばれていた。


 一方で魔物は、食したエネルギーの一部を自らの力とすることが出来る。



 人間同士の殺し合いでは、無色のエネルギーは発生しない。

 はずだった。


 魂のエネルギーが結晶化することもない。

 それも、そのはずだった。



 ミアデとセサーカが血に塗れた姿で夕陽の中に立ち尽くしていた。

 消耗している。

 体力だけでなく、かなりの精神的な疲労があるはず。


 だが彼女らは、そんな自分たちの疲れよりも、深い恨みから湧いてくるような力を実感して、戸惑っているようだった。



 白く濁ったような石が、多少は血に汚れているが、大量に積まれている。

 命石、とアヴィは呼んでいた。


 本来なら人間からは取れないはずの魔石。

 アヴィやルゥナが殺した場合には、それが採取できる。



 その力を――特異な、先例のないその力を分け与えられたミアデとセサーカも、同じくそうなったようだ。


 アヴィの体液によって。




(体液……)


 その理由の想像はついている。


 アヴィがその力を授かったのは、粘液状の伝説の魔物からだった。

 おそらくアヴィの体液にはそれが深く交わり、前代未聞の能力を発現させている。


 魔物と同じように、人を狩れば力を得られた。


 人が、魔物を狩るのと同じように、とも言える。

 魔物が、人間を狩るのと同じように、という言い方も出来る。



 神話の時代に魔神は、魔物も含めた全ての命と共生をと願ったという。

 人間のみを愛し子に……とした女神と対立した魔神の想いは、今このアヴィに受け継がれているのではないだろうか。



 魔神から生まれた最も深い魔物、それに育てられたアヴィ。

 彼女こそが魔神の後継者であり、清廊族の希望であり、人間にとっての終わりを告げるもの。


 そんな存在であるアヴィは、まるで母親のように、立ち尽くす二人の少女の肩を抱いて何かを囁いていた。


 母親のように。



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