第472話 トンチキ創作術(思考編)

 今回も自分の話。の後編。

 さて、一日に一万字を書く方法は、まずとにかく早くタイピングすることですが、もう一つは事前に準備する事に尽きます。

 前にも書いたかもしれませんが、僕はとにかく頭の中で考えて、それは三つくらいの要素で出来てる気がします。一つは「ストーリー」、一つは「映像」、一つは「見せ場」です。

「ストーリー」はとにかくどんなふうに話が進んでいくかで、これはあまり考えません。必然的なストーリーみたいなものが僕の中にはあるので、これは登場人物を作って頭の中で動かしているうちに「見せ場」が出来た時、その「見せ場」の連結をスムーズにするだけの要素です。

「映像」は、場面がどんな空間か、みたいなことになります。これは書く前に出来上がっている必要はないというか、書いているうちに細部が見えてきて、それを随時、文章に置き換えます。チャンバラを書く場合などは、空間を理解しながら、カメラのようなものを意識して、どこをズームにしているか、とか、どの角度から撮ってるか、という手法も使います。時間をスローモーションにすることもあります。

「見せ場」は「映像」と少し連結していて、その「映像」が映してる場面において、会話や動作でどんな動きがあるか、を考えることになります。アクションの「見せ場」もそうですし、それ以外でも、打ち出したいセリフなどもここでぼんやりと考えます。

 こうしていくと、「映像」で成り立つ「見せ場」の連続を「ストーリー」で繋げていくことになり、これはプロットがあろうとなかろうと、とにかく流れ作業でタイピングしていくことができます。ちなみにこの三つの要素のうち、「映像」と「見せ場」は書きながらも考え続けていて、書いているところも、次に書くところも、先のことも、とにかく考えてます。なので、セリフなどは最初の想定とはまるで違くなることもあります。「ストーリー」はプロットがないと歪むので、必然性はあるいは、ないのか、な……、

 速く書くことが良い作品に繋がるわけではないですが、僕の中では、書いたことを疑わない、ということはあるかもしれません。読み手に理解してもらえるだろうか、という疑問、疑念はつきものですが、そこは自信を持って書くしかない。書いたり直したりして先へ進めないよりは、とにかく書いて先に進んだ方がいいのでは。書き終わってから直した方が、うーん、効率というより、合理的です。直して書けないよりは、書いて直す、の方がいいのでは。

 というわけで、僕の主義としては、とにかく考えて、とにかくキーボードを打つべし、となります。

 この前、Eテレで作家の人が「キーボードを打つと作業になるから、ペンで原稿を書いている」と話していて、作家はさすがに違うな、と思った。

 僕は自分の創作を「作業」と表現してます。ちょっと意味合いは違いますが、なるほど、と思いますね。僕がやってるのは創作ではなく、タイピングです。やれやれ。



2023/10/2

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