第449話 的場華鈴さんと根本凪さん

 今回はアイドルの話。

 つい先日、虹のコンキスタドールで、予科生から本科性に昇格したメンバーの中に、的場華鈴さんがいます。この人は一度、卒業して、それから予科生に戻り、今、元の立場に戻ったことになります。

 さて、もう一人、的場華鈴さんと同時に卒業したメンバーで、根本凪さんという人がいます。この人は今、一人で活動しています。

 その根本凪さんがツイッターで、虹のコンキスタドールに戻りたいというような葛藤を感じさせる発言をしていて、僕はかなり動揺した。

 それは、僕の中では的場華鈴さんがどうしても許せないところがある一方、何故か、根本凪さんには、またグループに戻っても良いのでは、という真逆の感情が発生したからです。

 まったく不可解なんですが、理由としてありそうなのが、的場華鈴さんが一度、卒業した時、的場華鈴さんにはまるで屈託がないというか、明るい雰囲気の中で卒業を発表し、明るく卒業して行ったのですが、一方の根本凪さんは少し違う、という部分です。根本凪さんは体調不良で活動が難しい場面があって、それが卒業につながるように受け止められる要素があった。

 うまく説明できませんが、これはつまり「イノセンス」で引用された、「鳥の血に悲しめど、魚の血に悲しまず。声あるものは幸いなり」という感覚と同じものなのかもしれない。

 根本凪さんが苦しみながら卒業したところには、苦悩とか、苦渋とかが見え隠れして、つまり「苦しむ声が漏れている」ようなイメージが浮かぶ。それに対して的場華鈴さんは、卒業したくて卒業した、「無声」のようなイメージで、おかしな話ですが、根本凪さんがグループに戻りたいと考える葛藤と、的場華鈴さんにもあっただろう同じ葛藤は、どこか違ってしまう。感覚として。実際には両者は全く同じはずなのに。

 僕はおそらく、ずっと的場華鈴さんは許せないというか、受け入れられない。身勝手という表現はかなり違うけど、的場華鈴さんが乗り越えたというか、おそらくかなり苦しんで突き破った、「戻ることはできない」と「戻りたい」の葛藤が、どうしても僕には軽いものには見えない。葛藤し続けるべきとも言えるし、それは「戻ることはできない」という考え、本来的には覆せない部分をもっと重く感じて欲しかった、とも言える。根本凪さんが一時的にとはいえ、声を漏らすほどに苦しむように。

 まぁ、今も的場華鈴さんは的場華鈴さんとして苦しんでいるんだろうけど、その苦しみは根本凪さんの苦しみと比べてしまうと、難しくなる。

 とにかく僕は長い長い時間をかけても、一人のアイドルの決断を理解できていない。狭量な男だなぁ。



2023/7/9

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