第444話 言葉の面白さ

 今回は「言葉」の話。

 前にも書いた気がしますが、Kindleのキャッチコピーが「最高の読書体験をあなたに」みたいな感じでした。で、「最高の読書体験」ってなんだろう、となって、僕の中では「Kindleという端末はストレスフリーですよ」という意味で解釈されていたけど、どうやら、「果てしない数のKindle本には必ず好みのものがありますよ」みたいな意味だったらしい。キャッチコピーって難しいなぁ。

 これは少し前にとある作家さんが発言してましたが、子どもに向ける言葉で「他人が嫌がることをすすんでやりなさい」という表現があって、これが少し文脈を変えると真逆になる、という面白い発言だった。「嫌がることを代わりにやる」ではなく、「嫌がられることを率先して実行する」という意味にもとれる、ということですが、これは日本語が難しすぎる。善意と常識で考えればなんの問題もないけど、それがないと大変です。

 僕は物語を書く時、頭の中の光景や頭の中の人物の思考を文章に変えていきますが、これは奇妙な表現になりますが、空想を現実として書く、という感じです。頭の中にある空想は、空想の中では現実と大差ないわけです。対照的なのはラジオに送るメールで、ラジオに送るメールは現実の僕の頭の中にあることや、僕の身に起こったことになります。現実を現実として書く、ということです。

 この「物語」と「メール」は、同じ言語で表現される、テキスト上に存在するもので、逆に考えると、テキストでしか確認できない。ユニークな点としては、物語を読む人はそれが「作り物」だと思って触れるけど、ラジオを聞いている人はそれを「真実」として受け入れることが挙げられます。物語はともかく、ラジオで読まれるメールの内容が嘘、でっち上げの作り話だと考えて聞く人はいないでしょう。いるとしたら、かなりな変人か、ネジが何本か抜けてます。まぁ、ラジオに嘘をメールするのは御法度ですが。

 言葉やそれが表現するものをどう解釈するかは個人に任されているけど、解釈のミスはあるし、そのミスに気づかないこともあるようです。ただ、どのような解釈をするにせよ、そこには不文律のベクトルがあるのも事実で、その「善なる方向性」を信じることは大切だな、と感じますね。



2023/7/1

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