第443話 なんだかんだで読み込んでしまう
今回は身近な読み物の話。
いろんな事情で本が手に取れない時、手元にある小さな冊子を開くことが多い。その冊子は、夏に開催されたりする、各出版社のフェアの対象作品を列挙した冊子です。これは読んだぞ、とか、これは気になる、とか、適当に流していくのですが、意外に楽しい。
僕の身近なところでは角川、新潮、集英社はフォロー出来て、結構、新鮮さが薄れない。むしろ、ここから発見していくこともあるし、ニヤついてしまうこともある。集英社が北方謙三さんの「岳飛伝」の第一巻を取り上げてたりすると、「水滸伝」ではないということは、「岳飛伝」をまず読ませて沼にハマらせる戦略かな、と思ったりした。いや、しかし「水滸伝」と「楊令伝」を通らずに「岳飛伝」から入る人、いるのかな……。他では、角川文庫から綾辻行人さんの「Another 2001」が出ていて、既刊を読んだけど、もうほとんど忘れてしまったな、と寂しくなったりする。どこかに文庫本は埋れているけど、果たして読み直すだろうか。
意外に強いのがハヤカワ文庫のフェアで、うーん、はっきり言って、毎年、似たようなラインナップです。ただ、そのおかげで自分の読書の経過がわかるのはありがたい。「鷲は舞い降りた」とか「一九八四年」とか、「卵をめぐる祖父の戦争」とか、堅いところは押さえてある。一方で手付かずもたくさんあって、そこは未知なので興味深い。それにしても、近場の書店でハヤカワ文庫のフェアがないので、冊子の入手がどんどん困難になっている。都会に出かけなくてはダメかもなぁ。
僕は本を買う時、書店で表紙や帯を見て興味を惹かれるものを探しますが、どうにも書店の品揃えも難しくなっている。ハヤカワ文庫は特にそうだし、角川もやや厳しいか。頑張っているのは新潮文庫ですが、こちらはこちらで、難しい場面もある。具体例を出すと、村上春樹さんの文庫を棚に揃えておいて、さて、どれだけ売れるだろう。池波正太郎さんの「剣客商売」や「真田太平記」が次々売れるなんて、あるかな。吉川英治さんの「三国志」がいきなり売れるか? こうして狭い書店の限られているスペースが、古典的作品に制圧されて、新しい本はあまり残らない。これは余談ですが、僕が在庫確認しながら注文せず、他の書店で買った本が、在庫確認した店に出現することがあって、商売って難しいな、と思う。僕に売りつけたい訳ではないだろうし、在庫確認されるということは需要がある、と受け取れるけど、それほどの需要がないわけで、ややこしい。
ともかく、文庫本をチェックするのは、日常ですが、良い本に出会いたいものです(?)
2023/6/30
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