第411話 闇の中の書店

 今回は、何度目かの「書店」について考えるお話。

 歩いて行ける近場には個人経営の書店が一軒、あります。ここが「地方のど田舎の書店あるある」とでもいうべき、教科書を取り扱う書店です。なので、三月の大半はそのために閉まっていたし、四月も教科書のために一部スペースが実質的に閉鎖されてました。閉鎖と言っても、ブルーシートが床に敷かれて踏み込めない棚がある、に過ぎませんが。

 さて、この書店で雑誌を買っている関係で、何冊かの本を注文したのですが、これが今、かなり怪しい雲行きになっている。

 実は注文するタイミングを測っていて、それが欲しい本がe-honというサイトで、在庫切れになったり、復活したりを短い周期で繰り返していて、手に入るか入らないか、分からなかったからです。で、e-honで入荷待ちでも店舗では注文が可能なのか、試すような感じで、注文することになりました。

 お店に行くと、お婆さんの店員さんがパソコンをいじり、すぐには届かないけど注文できる、というような反応を示したので、「待つので注文してください」と思わず口走ってしまった。

 ただ、問題はそのお婆さんが、僕がスマホを見せているのに、紙に書名と僕の名前と連絡先を書け、と言い出した。で、仕方なく自分で、ものすごく下手な字で紙に書いて、あとはよろしく、となったのだけど、これもやはり、後々の不安の種となった。

 さて、一週間ほど経ちまして、何か動きがあったかといえば、何もない。しかし、e-honの上では在庫の復活があり、在庫切れがあり、また復活し、また在庫切れしていて、おそらく注文のタイミングからして僕のための一冊は確保できた、と思いたい。

 しかし連絡がないので、待つしかないのですが、ここで全ての伏線が回収される。いや、それは被害妄想か?

 まず、「待つ」と勢い込んで言ってしまったけど、もしかしたらあの書店は、教科書を優先して、それが終わってから発注する、などということをしない、と断言できるだろうか……。そして、あの僕の下手くそな字のメモが他人に読み取れただろうか。メモが読めなければ連絡が来るはずだけど、教科書の忙しさの中でメモがどこかに紛失してしまう憂き目に遭えば……。

 というわけで、ヤキモキしながら待つしかありません。どうせ来月にはまた雑誌を買いに行くし、新しく本を注文する予定なので、なんからの形でそこで結果が判明しますが、そういうところだぞ! 個人書店! というのが僕の心理です。

 都会ではあまり話題にならないかもしれませんが、田舎だと書店が減っていくことを、何故か「文化」を持ち出して危機感を訴える場面がちらほらある。しかしこうなってしまうと、書店が文化の担い手だとしても、それ以前に「サービス業」として成立していないので、何も言えないのでは。これは資本主義とか競争とかではなく、そもそもからして、書店は「本」を「その場で買える」というサービスの場で、文化は「書店」というより「本」が担っていたに過ぎないのでは。別の分野では、例えば音楽という文化の担い手は「レコード」で、「レコード店」もあれば「ジュークボックス」みたいな形があったし、「ラジオ」もあった。まぁ、「書店」と同様のもの、近い場所は「図書館」があるか。

 現代の個人書店は、もう「その場で買える」場所ではなくて、それは相対的な評価ではなく、絶対的な評価のように僕の中ではなっている。本の注文を代行してくれる場所、にすぎない。それだけでもありがたくはあるけど、無くなればまた別の場所を探す、代替可能な場所です。

 もっと「サービス」を充実させて、お客が満足しないと、いよいよ立ちいかなくなるな、と勝手に思ったりした。

 しかし、僕の頼んだ本はいつくるんだろう……?



2023/4/15

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