第410話 方法論を超越出来るか否か
今回はどうしても譲れない「創作」の限界とその飛躍に関して。
人工知能が文章を即座に作ってくれる時代になりましたが、さて、これは「万能」なんだろうか。
創作においては様々な創作論がある、というのは当たり前で、この人工知能の問題において重要なのは、「既存の実作」から学習している、という点です。なので、「村上春樹みたいなものを書いて」と言ったら、村上春樹風な文章が出力されると思う。ふと思いついたのは、フェルメールの贋作を描いた画家の話ですが、ここまでいくと、真作も贋作も、人間の作家も人工知能も、もはや意味をなさない、かな。
さて、これは実際に僕がやったことで、前にもどこかで書きましたが、ラジオにメールを送る中で、ある意味では飽きたんでしょうけど、玄人じみたメールはやめにして、素人のようなメールを書く、ということをしていたことがある。これは、人口知能には出来るのだろうか。それは例えば、ラジオ番組で読まれたメールの中からデータを抽出して? とか? では、人工知能はどうやってメールを送った人が素人か玄人か、判別するんだろう? この辺りの感覚を考えてみると、「ラジオで読まれるメールを書いて」は、事実無根の内容になるとはいえ、人工知能にも書けるかもしれない。しかし、「素人くさいメール」は書けないような気がする。素人、というものが抽象的で、さらに、くさい、とくると、人工知能には判断ができない。もちろん、素人くささを学習すれば出来るだろうけど、素人くさいメールは大抵、読まれないので、人工知能に頼る意味はない。いや、それを言ったら素人くさいメールをわざわざ公共の電波で読まそうとするのも、あまり意味はないですが。ほとんど、意味はないですね。
僕が人工知能には不可能だと思っているものの一つは、「大喜利」です。正確には、人工知能がやる意味があまりない、ということになります。大喜利は正解がなく、面白ければなんでもありだし、場合によっては滑ることさえもが笑いになるので、人工知能がどうやって学習できるのか、かなり複雑になる。「笑い」をどう解釈するかも難しい。さらに答える内容が、人間に理解できるかできないかの際どい領域になるので、学習が難しい。大喜利の面白いところは、何を言ってるか分からなかったのが、そういうことか! と理解が及んでハッとなる一瞬が存在することで、さて、人工知能は、どこまでこの人間の心理を理解できるだろう。
これは小説でも起こりうることで、例えば人工知能がミステリのトリックをゼロから作り出せるかどうかは、注目すべき点と思われる。仮に過去の実作を真似ることしかできないなら、人工知能が書いたミステリ小説は、既存のトリックか、既存のトリックの合わせ技しか使えないことになる。これではあまりに貧弱です。この辺りに方法論や実作とは無関係な、人間の知性が生み出すものがうかがえるような気がしますね。しかし、叙述トリックは人口知能にも扱える気もするな。うーむ……。
僕も人工知能に負けないように頑張りたいところです。
2023/4/13
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