第400話 もう店はないのか……

 今回も個人的に懐かしい話。

 学生時代、一人暮らしをしてましたが、近場の書店をうろつき回ってました。一時期は毎晩、日がとっぷりと暮れてから、悠々と本屋へ繰り出す生活をしてました。

 あまり地名を出すと色々バレますが、多摩センターはいろいろと都合が良かった。本屋が何軒もあって、めちゃくちゃな充実度だった。丸善も良かったけど、京王線か小田急線の駅に併設の書店をかなり利用した。ここで伊藤計劃の存在を知ったし、そもそもからして桜庭一樹さんの「少女には向かない職業」を買ったのもここだったのでは。賀東招二さんの「フルメタル・パニック!」の最終巻もここで買ったはず。

 それから足を伸ばして利用したのが聖蹟桜ヶ丘の書店で、駅ビルの中に大きな本屋があった。くまざわ書店だっただろうか。ここでは、ガルシア・マルケスの「予告された殺人の記録」を買ったり、松岡圭祐さんの「万能鑑定士Q」のシリーズを買ったりした。すぐそばの別の建物にはあおい書店みたいな名前の店もあって、ここではディックの文庫を買ったものの読まずに放置して、長い長い時間が経ってから読んだ。この店は漫画のコーナーが面白い構造だった。また別のビルの中にも書店があって、しかしここは気づくと閉まっていた。ここでは桜庭一樹さんのエッセイを買った。読書日記の前のエッセイです。あー、そう、この店で、電撃hpの公募で、人生で初めて一次を通過したのをチェックしたかも。もちろん買いました。他には奈須きのこさんの「D.D.D.」もここで買ったような。

 多摩センター、聖蹟桜ヶ丘とか、この一帯に古本屋もあって、まずブックオフが二軒あってどちらも利用したけど、それ以上に重宝したのは「ブックセンターいとう」だった。本も買ったし、CDも買った。一番印象深いのは、野猿街道を聖蹟桜ヶ丘方面から南大沢方面へ行く途中にある店舗で、ある時、たまたま声優雑誌が気になって雑誌コーナーを眺めたら、「テイルズ・オブ・ジョーカー」がずらっと棚にあって、たぶん一冊百円とか二百円だった気がするけど、とにかく激安で、まとめて全部、回収しましたね。版も大きいし三十冊はあったので、持ち帰るのが大変だった。しかしこれは僕が古本屋を利用した中でも指折りのお宝発見だった。今も全て、手元にあります。

 もう一店舗、聖蹟桜ヶ丘にもブックセンターいとうがあって、ここも頻繁に利用した。不意に思い出したけど、ブックセンターいとうは文庫本は値札を貼ってなくて、最後のページの隅に鉛筆で値段が手書きで書いてあったな。とにかく窮屈な店だったけど、いい店だった。

 こんなことを書いている理由は、たまたまツイッターで検索してみたら、ブックセンターいとうの聖蹟桜ヶ丘店は無くなった、という情報にぶつかったからで、しかもかなり前になくなったらしい。うーん、かなり寂しい。

 時間は流れているんだなぁ、とちょっとしんみりした情報でした。



2023/3/20

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