第369話 「大人の本気の悪ふざけ」みたいな商売

 今回はツイッターで見た、謎すぎる報道について。

 なんでも梅干しの消費量が二十年で四割減になり、困っているらしい。倉庫がパンクして商品の行き場がないとのこと。

 僕がこの話を見た時に真っ先に感じたのは、なんで減産しないの? ということ。

 普通、売れる数に合わせて商品を作る。もちろん、急に売れなくなると計画とズレるから在庫が膨らむ。しかし二十年もかかってるわけだから、本来的には需要に合わせて作る量を加減するものでは。

 梅干しを作ってるメーカーは、減産すれば利益が減り、困ったことにはなるはず。困ったことにはなるけど、実際は倉庫に溢れるほど作り続けた結果、やはり困っている。その在庫は売れない限り、会社の損にしかならない。

 商売は難しいけど、少なくとも、売れないものを用意しても仕方がない。別の商品に投資した方がマシなのでは。

 倉庫が溢れてから問題にする前に、梅干しメーカーは商品が売れない事実をデータとして知っていたはずだし、ここに至ってメディアに訴えるのも、後手後手というか、手遅れの感が否めない。この件に関しては、楽観が露骨すぎて、怖いと感じた。どうしたら、今、売れないものが、いつかは売れるようになる、と考えたんだろう。経営戦略が謎すぎる。まぁ、純粋に梅干しだけを作ってるメーカーはなくて、他の製品で利益があるんだろうけど、それでもデッドストック確定の商品を作る理由、作り続ける理由は見当がつかない。かなりな強気な態度だ。

 商品は売れなければ意味がないから、様々な形で付加価値をつける。それは例えばパンなどで言える。スーパーでは様々なパンがあるけど、アンパンだけでも数種類、食パンだけでも数種類がある。おそらくその中では、売れる商品と売れない商品がある。ただ、寡聞にして、パンが余って困っている、という話は聞かない。計画を立てて、在庫が出ない工夫があると思われる。ここのところ、学校給食が休みの時期に生乳が余るのでなんとかしよう、という話を聞く。生乳は僕はあまり飲まないけど、プロテインは飲むので、加工してそこになんとか漕ぎ着けて欲しい、と思ったりはする。実際には至難だろうけど。

 ふと浮かんだ疑問として、生乳は苦渋の決断として廃棄できる、というか商品としてすぐに廃棄する段階がくるけど、梅干しが納められた倉庫は、長期間、梅干しを置いておくはずで、その維持管理だけでも金が余計にかかる。梅干しは作れば作るほど損害が増える、奇妙な食料だな、と思ったりした。

 生産計画が全く機能不全を起こしている梅干し業界とは、どんな人たちがどんな顔で商売の未来について議論しているか、気になった。



2023/1/13

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