第355話 タイミング
今回は「タイミング」の話。ブラックビスケッツの話ではありません。
なんとなくいろんな人のエッセイを読むと、文章の書き方って様々だな、と思う。有名なところでは西尾維新さんはすごく筆が早いらしい。一方でアマチュアの方ではかなり念入りに書いているんだな、という速さの人もいる。速い方がいいわけではないけど、進む速度が遅いと大変だろうな、とは思う。
僕はといえば、一応、一時間で五千字程度は書ける。書けるけど、はっきり言って表現を吟味したりしない。浮かぶままに書きつけることになる。それはおそらくあまり良くなくて、雑な文章になっていると思う。
僕が文章を書くことに真剣になったのは十六歳くらいの時で、その時はキーボードに不慣れだったけど、やっぱり同じように、思いつくままに書いていた。おそらくその時の習慣が今も残ってしまっていると思われる。
昔々、小学生の時とかは授業の中で作文を書くのは時間がかかった。ただ、やはりあまり文章を吟味しなかった。何故かはあまり分からない。
こうなると、僕が文章を書くことと向き合ったタイミングが早すぎたかな、と思ったりする。もっと美しい表現、的確な表現を知った段階で、それを目指して書くようにすれば、僕も細部まで吟味するスタイルになったかもしれない。僕はどこまでいっても、子どもの感覚で、自分勝手に書いているかもしれない。
僕に文章の面白さを教えてくれたのはライトノベルだったけど、もし別の何かとどこかで出会っていれば、また違った文章感覚の持ち主になったと思う。悔しいとは思わないけど、惜しいとは思うかな。
タイミングといえば、僕が友人に感謝していることとして、綾辻行人さんと森博嗣さんの存在を教えてくれたのは、あの瞬間、あの場面、本当に全てが見事に噛み合っていた。大学一年くらいの時で、僕はライトノベルから、桜庭一樹さんを辿って一般文芸に興味を持ち出していた時で、不意に友人が「十角館の殺人」と「すべてがFになる」を教えてくれたわけだけど、これは興味が湧いていたところだった上に、近場に古本屋があって容易に手に入った。ここから僕の読書傾向は変わりましたね。
桜庭一樹さんといえば、今になるとびっくりですが、文学フリマで、桜坂洋さんと合同の同人誌を売ってるところに遭遇したのも変にタイミングが合っていた。もう記憶もあやふやですが、「少女には向かない職業」が出た頃だったような。その時の僕は桜庭一樹さんを真剣に追ってなかったはずだけど、全ての歯車が同時に回転する、変な瞬間だった。
大勢が文章を書いたり、本を読んだりするけど、それぞれにきっかけ、タイミングがあるんだろうなぁ、と思うとなんというか、神秘的です。
そう、ちょっとした「フォレスト・ガンプ」体験でしょうね。うーむ、良い映画だった。
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