第334話 思想という共通フォーマット
今回は創作の私感の話。
テンプレっていうものを僕はあまり理解してないのですが、創作において共有されるべきものがある気がしていて、それはおそらく「思想」ではないかと。ものすごく広範に渡るのですが、例えば、努力、友情、勝利、がそんな感じです。勝利があるということは、当然、敗北もあります。過程としての勝ち負け、結論としての勝ち負けもあるでしょう。
この「思想」の共有は、うーん、なんというか、価値観みたいなものにも近い。転生とか悪役令嬢とか、そういう設定がありますけど、それはある部分では「思想」ではなかろうか。前世では不運だった人が来世では成功する、みたいな幻想が心地よい、という価値観を持っている人の間ではこの思想は共有されるし、優れた娯楽になる。僕はといえば、前世も来世もまったく信じていないので、残念ながらこの「思想」は共有できないのですが。
少し話しを進めて、仮に「ゲーム世界に入り込む」という要素は、「思想」だろうか、と考えると、これもやはり、ある部分では「思想」になる。でも「思想」ではなく、「装置」でもある。転生もある種の「装置」でもある。物語を稼働させるための。
ネット小説という文化の不思議なところは、「思想」だけではなく、「装置」さえも共有されるところにあると感じています。異世界という概念も「装置」で、ものすごく大きな「装置」です。この、装置の共有が、ネット小説の輪郭のように見える。
僕はあまり真剣にではないものの、ここ二十年くらい、創作に触れてきたけど、「装置」が共有される例はあまりなかった。週刊少年ジャンプに限定しても「ワンピース」、「HUNTER×HUNTER」、「ブリーチ」、「ナルト」、「銀魂」と色々ありますが、これらは、「思想」の深いところでは共通するものがあるとしても、設定という「装置」においては共有できるものは少ない。これは、ライトノベルにおける「現代ファンタジー」の「現代社会」を「装置の共有」とすることさえもが、実ははるかにアクロバットに近いのでは、と感じる。少し脱線して、雑誌を広げていっても、「はじめの一歩」、「名探偵コナン」、「グラップラー刃牙」と、装置はやはり共有されていない。「名探偵コナン」と「金田一少年の事件簿」ですら、共有されない装置がある。まぁ、コナンの世界の時間の流れがよく分からなかったり、金田一の世界だと局所的に犯罪の加害者と被害者が密集したりする、不自然さが生じるのですが。
ともかく、「思想」ではなく、「装置」が共有されるのは、創作の場で起こる事態としてはだいぶ稀有な現象なのでは、と思ったりした。
ちなみにジャンプ漫画でおすすめは「火ノ丸相撲」です。
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