第318話 サイレントマジョリティの「サイレント」とは
今回は言葉がいかにも都合よく使われる話。
みなさんは、何か、政治活動をしてますか? 選挙の街頭演説に行ったりしますか? 応援する候補者の決起集会みたいなのに行ったりしますか?
僕はつい最近まで知らなかったのですが、両親の知り合いが、とある政党を応援する組織の一員で、僕がそれを知ったのは両親からでもなく、当人からでもなく、偶然に見たSNSの情報でした。なので意外というか、そもそもそういう活動があって、活動する人が身近にいるのに驚いた。
さて、安倍晋三さんの国葬の一般献花に大勢が列を作って、「これこそがサイレントマジョリティ」という意見がSNSで散見された。これはどういうことだろう。国葬反対を叫ぶ人が多いように見えているけど、国葬賛成がこれだけいるんだぞ、という主張だろうか。意見の中には、世論調査が間違っている、という意見もあった。
さて、どんな人が献花に行ったのだろう。まず、平日の昼間に仕事を休めた人ではあるけど、同時に東京へ移動できる立場の人でもある。そして、考えてみると、東京都が百万人の人口があったとして、自民党を支持する人が二%でも、二万人が動員されるのではなかろうか。もちろん、自民党の支持率は三十%はあるはずですが。
話を戻して、サイレントマジョリティの「サイレント」とは何なのか。その人は沈黙しているわけで、まず、国葬反対! とは叫ばなかったはずだけど、本当にサイレントなら、国葬賛成! とも叫ばないはず。そして、献花に行った瞬間に意見を表明しているので、サイレントではない。
僕が想像するに、本当のサイレントマジョリティは、国葬の賛否を適当に聞き流し、国葬当日に普通に働き、夜のニュースで映像を見ながらビールを飲む、みたいな感じなのでは。
これは僕の私感ですが、日本人は政治活動に力を入れない傾向にあるように見える。無党派層が多いこともあるけど、同時に政治活動をしている人を警戒する向きがあるのでは。僕自身、私は自民党の党員です! と言われたらたじろぐし、私は共産党員です! でも戸惑う。もちろん、立憲民主党を支持してます! という相手でも困る。
この国のマジョリティとは、そういう無色透明な人なのではないか。国葬をちょっとしたイベントと捉えて、ただの世間話と酒の肴にするような人が、圧倒的に多数に思える。献花さえも、ある種の主張と捉えて、知らん顔で行かないような人たち。
SNSで個人の意見が簡単に表明できるようになったけど、しかし、それが実際の政治や世論とどれくらいの結びついているかは分からない。これは株のデイトレードに似ているかもな。
ネット上での意見の表明は、おそらく政治活動ではない。ゲームに近い。より多くの賛同者を得るゲーム。しかしネット上の多数派は、おそらく現実の多数派ではなく、現実の人たちの大半はネット上のことなど知らないかもしれない。
今回の件で感じたのは、見る方向を変えるだけで、少数派と多数派を自在に生み出せるということ、かもしれない。
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