第305話 個人的な祈り
どうしても書きたいので、書きます。
中学三年生の女子が、見ず知らずの母娘に切りつける殺人未遂がありました。僕としては、ただ悲しい、としか言えない。その女の子が何を思ったか、どういう人間だったか、何も知らないけど、何かができたはずだし、するべきだった気がする。もちろん、僕とは縁もゆかりもなく、見ず知らずの相手だけど、ひたすら悲しい。こういう時に、罪を憎んで人を憎まず、みたいな言葉がわかる気もする。
たまたまテレビでワイドショーを見ていると、親子でのコミュニケーションで、どこかの有識者だかタレントが、車の中なら胸襟を開いて話ができる、と話していて、正直、うんざりした。僕も昔、親と車で二人きりになったこともあったけど、僕は喋らず、運転する父親が終わることのない説教をしていて、最悪な時間だった。そんなのはコミュニケーションではなしい、心安らぐことはないし、安心もしなければ、気分が塞ぐだけだった。むしろ密室で良いようにされた子供の気持ちをケアする事態になると思う。
僕は例えば異常者とされる人でも、病気とされる人でも、何らかの形で社会の中に場所を用意するべきだと思っている。何もできないとしても、その人が穏やかに、静かに時間を過ごせる場所を作るべきでは。それは、強制収容所ではなく、隔離施設でもなく、隔離病棟でもないけど、何か頭のいい誰か、考えだしてくれ。
どこまで行っても、全員が犯罪を犯さずに幸福に生きるのは無理でも、何かができると思うのは間違いか。あの人は異常だから、異質だから、病気だから、と分類せず、同じ人間として、どこかに共存できるようにして欲しい。
人を殺したい人はもう引き返せない、とはとても思えない。僕たちはいつだって変われるし、いつだって変えられる。それが大事なんじゃないか。
何を言っても、どれだけ言葉を重ねても、僕はただ祈るしかない。世界の平和なんてものじゃなくて、人の心の平穏を祈る。
悲しみも憎しみも絶望も、この世の全てではない。そのはずだから。
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