第297話 それっぽい!
今回は「小説ってこれなんだなぁ」と思った話。
前にコメントをいただいた時、それっぽい単語、に注目している方がいて、なるほど、と思った。これって実は全てに言えて、異世界ファンタジーでも、「地下迷宮」とか「ギルド」とか「五大精霊」とか言われるとそれっぽい。現代ファンタジーでも「心霊特務室」とか言われると受け入れ易い。SFでも、「ハイパードライブ」、「ドロイド」、「遺伝子調整」で全てオーケー。今になってみるとハイパードライブはなんというか、実にストレートですが。
そういう設定はともかく、実は文章表現にも、それっぽい表現があるような気がする。「むせ返るような花の香り」と言われると、なんとなくそれっぽいものを感じ取れる。花の香りでむせ返るって、むしろ花の香りの芳香剤をぶちまけたようなシチュエーションな気もしますが、逆用して「芳香剤をぶちまけたような匂いがした」が使えるわけで、文章表現はよくわからない気もする。
最近、なんとなく作った異世界ファンタジーで、鍛冶屋を登場させて、まぁ、過去にも似たことはあったのですが、鍛冶屋と聞くだけならなんとなくイメージできるけど、鍛冶屋の仕事を描写し始めると、途端にそれっぽくなくなってしまい、描くのもまとめるのも大変になる。この反省点を踏まえると、知識がないものは書いてはいけないし、書くとしても輪郭だけにしておいて、あとは読む人の想像に任せるのが吉、ということでしょう。
ちょっと脱線しますが、ヨルシカが結構好きで、聞くのですが、アルバム「だから僕は音楽を辞めた」と「エルマ」における、エルマとエイミーの物語は、音楽を聞いているだけだと断片的にしか分からない。ネットをちょっと調べると考察をしている人が意外にたくさんいて、唸らされる。歌詞などから情景やストーリーを想像していくのは、凄いことです。そんな歌詞を作るのも、読み解くのも、凄い。最近は「春泥棒」をMVを見ながら確認していて、なんていうか、泣きそうになる。断片的な情報が繋がって、真相らしいものに辿り着いた時、本当の意味に胸を打たれる。
歌詞って、それっぽい単語を綴っていくしかないように僕には思える。はっきりしたことを盛り込んでも、十全には言葉を尽くせないのでは。ヨルシカの曲の歌詞にあるけど、「この歌の歌詞は360字」なんですから。僕やカクヨムのユーザーが3000字とか10000字とか、100000字を費やしているのを、作詞家はもっともっと短い文字数でやっている。どちらが正しいとかではなくて、短い言葉で、最大限の効果を導き出す技術が、実は重要、ものすごく重要なのかもな、と感じた、というのが今回のお話になります。
ちなみに僕がヨルシカで好きな曲は「藍二乗」で、好きな部分は「エルマ、君なんだよ、君だけが僕の音楽なんだ」の部分です。「君」を繰り返してくるの、強い。
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