第279話 ついに来た!

 今回はコンテストのお話。

 僕はあまりここに誰かしらの作品についての話を書かないのですが、去年、もしくは一昨年、たまたま触れることになったエッセイがありました。

 それは、新代ももさんという方のエッセイで、まったくの興味本位で読み始めたのですが、この人の文章が、驚くほどよくできている。文章がうま過ぎる。並の文章ではない。個性的で、その個性は間違いなく一級品のそれがある。

 その方の小説がコンテストで特別賞を受賞されて、ついに来たな、と思った。本当に正当な評価、いや、編集さん、書籍化しようよ、と思ったな。

 僕がずっと不思議に感じている「読者選考」というものは、こういうところに齟齬が出る気がする。それは、僕の目が正しいとか、大勢の目が眩んでいるとか、そういう主張ではなくて、うーん、答えの出ない問いに、また別の解けない数式を用意してしまっているような。カクヨムコンで、僕が面白いと思った作品の一つが評価がすごく良くて自然と読者選考を抜いたけど、受賞しなかった。評価がすごく良くても書籍化されないのでは、読者選考とは何なのか、と思ってしまう。ふるいにかけているといえば、まぁ、その通りなんですが、そのふるいは公募だと下読みさんがやってるわけで、それをユーザーに投げてしまうのはちょっと違うような……。

 ともかく、文章が達者な人がちゃんと評価されるのは、こちらとしてもありがたい。僕が好きな書き手さんだったこともあって、良い刺激になった。

 蛇足になりますが、僕が新代ゆうさんの文章が良いなと思うのは、背景音が好きだからですね。前にどこかに書きましたが、僕は文章を読むときにその背景の音というか、気配みたいなものを何故か感じるのですが、新代ゆうさんの背景の音は静寂じゃなくて、うーん、古い電灯がジージーと、かすかな音を立てているような、そんな音がする。それがなんというか、心地いい。自然と読んでしまいますね。独特の個性で、安らぐというか、引き込まれる。

 この世界には評価されるべき人が大勢いることを再認識した。評価されなくてやめてしまう人が結構、多くいるんだろうけど、それは悔やんでも惜しんでも仕方ない、のだろうか。自分からやめてしまう、というところに難しさがあるんだろうけど。とにかくみんな、頑張ろう。僕はもう少し、粘ります。

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