第267話 アイドルMVに見る「狂気」。しかし、狂気は良いぞ

 今回はずっと気になってた話。

 もう新譜とも言えないほど前の発表でしたが、≠MEの「チョコレートメランコリー」という曲がありまして、これがなかなか好きなんですが、MVが特に興味を惹かれる。

 これがどうしてそんなに引き寄せてくるかというと、どことなく感じる「狂気」が僕を引き寄せていると思われる。映像の端端にある、背筋が冷えるような感覚。

 ちょっと雰囲気が違いますけど、平手友梨奈さんがソロで歌っている欅坂46の「角を曲がる」にも似たような感じを受ける。

 狂気と表現するしかないですが、うーん、言葉を探すと、底知れなさ、なのかな。

 これって現実にはあまり存在しない要素な気がしていて、実際に対面した人で、僕が「この人は凄いな」と感じた人はあまりいない。例えば僕は何人かの作家を神様のように見ているけど、その人のことは作品を通して知っているだけで、実際に対面したらどうなるだろう。

 オーラという表現がありますけど、それはきっと選ばれた人のみがまとうもので、大抵の「凄い人」は表現というフィルターがあって、何かを示せると思う。これが偽物とか、本物と違うとか、錯覚とかではなく、むしろ創作の場ではフィルターを自在に設定することで、天然の凄い人よりもさらに幅の広い、つまり「底知れない」ものを生み出せるのでは。

 今回のMVでも、やっぱり表現って面白いな、と感じる。≠MEでは「君はこの夏、恋をする」のMVもめちゃくちゃ好きなんですが、「チョコレートメランコリー」とまるで違う。百八十度違うくらい違う。歌ってる女の子は同じなわけで、衣装とか髪型、セットなどが全て違うとはいえ、僕が見ていて感じる「違い」は、女の子の「雰囲気」にあるわけで、そこがやはり「狂気」の気配になる。

 狂気といえば、大昔に大槻ケンヂさんのライブ映像を見て、どことなくそんな感じがあったかも。それを言ったら、ブルーハーツもそんな感じか。サンボマスターの山口隆さんがステージに転がるのは、うーん、狂気ではないか。

 どうしてこんなに「狂気」を求めているかは、僕自身もわからない。憧れなのかもしれないし、変な麻薬みたいなもので一度でも触れてしまうと求め続けてしまうのかもしれない。

 しかし「狂気」は良い。体の芯から震えるような創作に、もっと触れたいものです。

 ある部分では、「狂気」とは、「逸脱」、もしくは「飛躍」なんでしょう。どことなく、誰かが犠牲になるような気がして、そこは気になりますが。

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