第250話 一桁違う?

 今回は「一生分の読書」の話。

 たまたまネットでどこかの会社が「読書一生分のポイントをプレゼント」みたいな企画をやっていて、数字を眺めてみた。

 一千万円かぁ……、それだけあれば図書館も作れるな。

 そう思ったものの、何かおかしいと桁を確認すると、百万円だった。

 百万円かぁ……、うーん。

 僕の手元にある本がおおよそ、六百冊程度のはずで、おおよそ四十五万円程度だろうか。意外にあるな。もう僕は人生の半分を消化したらしい。

 それにしても百万円は本読みを軽く見た数字じゃなかろうか。平均から割り出したと思われるけど、本を読む人は本当に本を読みますから、僕なんてまだ甘いのでは。というか、家族を見ていると、明らかに甘い。

 僕が欲しいのは池澤夏樹さんが編んだ世界文学全集と日本文学全集です。これは両方合わせるとたぶん五十冊くらいで、一冊が三千円で、えーっと、十五万円ですか。意外に安いな。このシリーズが手元にあれば、おそらく十年くらいは読書に困らないと思う。それにしても、そう考えると百万円でも十分に読書人の中の読書人でも楽しめるのかもな。

 もし僕が百万円を手に入れたら、文庫化を待っている本をハードカバーで即座に買いますね。結構、文庫になるのを待っている本が多くある。あとは森博嗣さんの本を揃えたい。それも文庫版、ハードカバー、ノベルス、文庫新装版、と重複して揃えたい。この辺り、明らかに不審ですが。あとは、ガルシア・マルケスの新潮社から出ているハードカバーを全て揃えたい気もする。

 っていうか、変な使い方ですが、百万円で「理想の本棚を作る」というのが面白そう。自分を表現する本棚、みたいな。いや、本を読む人は既にそれを持っているのか。本棚がない僕が異常だ。これは本当に僕が悪いんですが、ネットとかで「本棚を整理しました!」とか言われて、どれどれ? と見てみると、確かに整理されてる。されてるけど、僕の本棚は文庫本が前後二重になり、上の隙間にも本を前後二重で詰めてある、汚い本棚なんですよね。それでも棚が足りないわけですが。この「汚い本棚」にはモデルがあって、「R.O.D.」の読子・リードマンをイメージしてます。なんというか、読まずに死ねるか! ってことです。(?)

 あまり出入りしませんでしたが、大学の教授とか准教授とかの人の狭い部屋がとんでもない、というのはちょっと感動したな。壁は全部本棚でそこに本がぎっしり、床にも本が積まれていて、テーブルも本に埋まり、ソファの上にも本がある、みたいな。ちょっと人種が違う、と感じましたね。

 一千万円あれば、あの光景を意図的に作れるだろうけど、しかし、何か違うよなぁ……。

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