第246話 大人になったということか……

 今回は思考力の限界を感じてしまった話。

 昔、子どもの頃に親が「勉強している時に食べ物を口にしてはいけない」と言っていた。よく分からない理屈で、「食べ物を食べると胃に血液が行ってしまい、頭に血が回らなくなる」というトンデモ理論だった。

 これがずっと不思議で、一人暮らしをするようになってからは、例えばラジオを聞きながらメールする時、お茶を飲みまくり、カップ焼きそばを食べながら、グルグル思考を巡らせたりした。それで非常にうまく行った。つまり親の理屈は現実とは無関係、空論なのでは、と思っていた。

 頭を使うというほどではないですが、思考を働かせ続けると、だいぶカロリーを必要とする感覚が僕は頻繁にある。だから、書き物をする時は始めて少しすると何かを食べたくなる。それはそれで自然と頭を回るし、問題ない。

 なんですが、最近、大人になって感じ始めたことがある。

 食べ物を腹一杯食べると、どことなく集中できない。これがどういうメカニズムかは専門家ではないし、神様でもない僕には分かりませんが、頭がぼんやりして、体が膨らむような、血管が膨らむような錯覚もある。その鈍重なところが思考の鈍さをより一層、強くしている、ような気がする。

 もしかして、本当に「胃に血液が行ってしまったのか……」と考えるのは、実は違うと思っていて、これはおそらくある種の老化現象なんじゃないかな、と思っている。普段から集中力は昔より落ちていて、それに肉体的な不調が拍車をかけているように僕には思える。親が「血液が胃に」というのも、親の年齢における実感であって、これは当時は子供だった僕には当てはまらない「感覚」だったんだろうなぁ。

 僕もそろそろ年齢は無視できません。じっと本を読んだり、将棋盤にのめり込んだり、出来なくなるのかなぁ。もちろん、一人きりの問題ですから、個人の領域です。しかし苦しい。残酷。こうして何もできなくなるのかと思うと、生きる理由、生きる意味を考えざるを得なくなってくる気がする。ぼんやりと時間を過ごすだけになるのは、僕の求めるところではない、とは思うけど、これから生きていく中で、理由とか意味とかを考える集中力がそもそも失われて、ただぼんやりとしかしていられないのか。

 とにかく粗食で耐えるしかない。体調管理から精神状態を整えなくては。

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