第214話 変なスイッチが入って、気持ちボロボロのバラバラ
ここのところの読書に関しての話。
あまり重い本を読まないということもなく、こだわりもなく読んでいるんですが、ここのところ、変に重く響く本ばかり読んでいる。そういうのが嫌ではなくて、面白ければ何の問題もない! というスタンスで、むしろ歓迎ですが、思考への影響が重すぎるのがここ数日。
これが作品の世界観や表現がズバ抜けて優れているというのもあるんですが、一方で僕自身があまりにも文章の中に沈み込みすぎている感じがある。
これは前にエッセイに書きましたが、ラジオを聞いている中で、平手友梨奈さんが「憑依型」と表現される場面があって、なるほど、と腑に落ちたわけですが、では、僕は読書においてどんなスタンスを取っているんだろう?
これもやはり前に書いた気がするものの、すっかり忘れましたが、とにかく僕は変なスイッチが入ると、作品世界に馴染みすぎて、二重的になってしまう気がする。現実は現実、小説世界は小説世界、という境界線はそのままに、重なり合って、なんていうか、眼球とコンタクトレンズみたいな関係になる。この二つをくっつける、なんていうんですが、液みたいなものの状態が、その時々の体調とか思考とか、それに影響されるらしい。
読書は本当に好きで、紙の上に文字で表現されていることは全部、頭の中で組み上げたい、と思ってます。そうすることが作者に対する誠意で、読書をするものとして絶対に変えてはいけない姿勢だと思います。この姿勢が前のめりになりすぎて、今の僕の頭は本に密着し、ズブズブ頭が沈むイメージになっている。変なホラーかコメディにありそうなような。頭が本になってるぞ! 本人間! みたいな。
何にせよ、僕は今、自分の心理状態をうまく把握できず、作品の中の空気が僕を取り巻き、作品の中の緊張が僕を縛り付け、作品の文章の緻密さが思考を制圧して、あぁ、もぅ、あぁ、とか、意味のないことを呟き、寝転がって、こたつに足を突っ込み、ラジオを聞いてます。深刻なのか、ただだらけてるだけか、分からないと思いますが、本当は絶望しているんですよ、これが。
自分に何ができるか、という問いかけの答えはもう出ている。
できることしかできません。
その先で、目の前に提示された、最高級の料理を口へ運んで、噛んで、飲み込んで、それからどうするか、というところが今です。不味いわけでも、大量に食べたわけでもないのに、僕の胃は痙攣して、食道はぎゅーっと締め付けられ、どうしようも無い。感動するべき味なのに、素直に感動できない。いや、感動して、苦しむ。言葉にならない感覚に、言葉にならないことに絶望する。
無力! とにかく無力!
僕はこの食べ物、小説に、何かを試されている。もしくはもう何かを試し、そして敗北した。
面白い小説が書きたいのに、今はもはや、自分の不足に次ぐ不足に失望するしかない。
それでもまた本を読んじゃうんだけど。
それにしても、息が苦しい。呼吸が浅くなる。
すごい書き手は、この世にあまりに多すぎる。
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