第206話 時代小説を書くとわかること
時代小説風の長編を書いて分かったことをまとめてみます。
まず、窓という概念が説明しづらい。窓ガラス、板ガラスというものが存在しないので、つまり現代的な窓がない。引き戸を開け閉めするか、つっかえ棒みたいな感じで板の戸を上げて固定するか、そんな感じになると思われる。
次に夜の光源が想像しづらい。部屋の中で灯りが蝋燭にしろ、灯火にしろ、現代的な光量にはならないと思われる。しかしそれはどれくらい弱いんだろう? となると、表現しづらい。部屋の中だと同じ部屋の中にいてもお互いの顔がよく見えないのだろうか? 例えば影が濃くなったりすることはありそうだけど、それが実際にどんな風な光景かは、現代人は想像できるのか……?
明かりに関して考えていく中で腑に落ちたのは、赤穂浪士の討ち入りにまつわるエピソードで、有名な話で、符丁を叫んでそこにいるのが敵か味方か判断したのは、おそらく闇が深すぎて視認できないんですね。それだから、討ち入りに気づいた吉良上野介の屋敷の隣の屋敷だったかから提灯が掲げられたのは、かなり重要な要素だったと思われる。
医療技術、医療水準も設定が困難だった。例えば、輸血はおそらく十中八九、存在しないので、大怪我で大量失血すると確実に死ぬと思われる。消毒するためには酒を使えばいい、と無理矢理に結びつけても、麻酔があるかないかは難しい。麻酔がないと、激痛で危険な事態になるのでは。
食料品でも、塩くらいは簡単に成立しますが、味噌はあるのかないのか、醤油は成立するのかしないのか、全く分からない。肉も、生肉を即座に焼いたり煮たりして食堂で出せるけど、しかし肉を処理して保存するなら、その保存方法はどうするのか。塩漬けか? 他にも、バターやチーズなどはいつ成立したんだろう?
字についても難しい。上流階級はもちろん字は読み書きできるけど、農民はできるのかできないのか、町民はできるとして、どこで、どのように学ぶのか。コピー機などないから、手作業で写本するわけだけど、ではそんな書籍はどういう値段設定にするんだろう?
こういう細かいところをうまくスルーできれば気楽に書ける気もしますが、僕はどうしても気にしてしまう。良いとか悪いとかではなく、凝り性なんですね。偏執的と言ってもいい。ただとりあえずは、実際的な本当の時代小説ではなく、ファンタジー、異世界ファンタジーという上での時代小説風な話にしたので、なんとかなった。目を瞑って、なんとか……。
あぁ、しかし、もっと楽になりたい……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます