第193話 書店を解剖してみよう

 今回は実体験的な不思議な書店のお話し。

 何度かこのエッセイで書いてますが、僕は地方の中の地方に在住で、書店に恵まれていません。というわけで個人書店を使うのですが、ひとつ、実に奇妙な書店がある。

 この書店は漫画本と雑誌がメインで、ハードカバーなどはほとんどありません。で、僕がここを利用するのは家から近いからというのと、紙のカバーが手に入る、この二点しかありません。もちろん、僕が買いたい本は100%、注文になります。

 これが不思議なんですが、形の上ではその書店の本が売れたということですが、ただ取り次いでいるだけで、本質的にはネット通販そのもの。なので、出版社から僕のところに直接、本が届くようにすれば、出版社は書店に払う分のお金を節約できる。実際には書店というものが成立していく中で組み上げられた構造があるので、そんな大胆なことはできないんでしょうけど、では、書店とは何なのか、とは思いますね。

 書店というのは本を売るところではありますが、一つの要素として「ショーケース」でもあるわけで、その点でまだ出版社が書店にお金を落とす理由はある。あるけど、なんか、弱いなぁ、と僕は思いますね。

 これは少し前、ツイッターで話題になりましたが、僕は確かにライトノベルを買う時、表紙の絵で琴線に触れるか、測っていた。でもそれから時間が経って、一般の文芸書や文庫本になると、もはや表紙とかではなくて、書評その他の情報を参照するし、好きな作家の本だから、とか、何かの原作本だから、とか、場合によっては背表紙だけ見てタイトルがかっこいいから、みたいな理由で本を選んでしまう。これでは書店=ショーケースにはならない。出版社が、なんとか本を置いてください、と書店に頼むより、ネットで情報を発信した方が安価で、簡単で、最初の簡単な情報で興味を持った人にさらに深い情報を提示することも、スムーズにできる。

 僕が書店、それも個人書店を利用するのは、書店が好きだから、空気とか匂いが好きだから、というところがある。これはAmazonその他の通販では感じ取れない。でも似た感じのものをセールのKindle本の一覧を見ていると、感じることがある。書店のいいところって、「読んでない本がこんなにある!」といったように刺激を受けるという要素が僕の中ではあって、それがネット上では希薄なのは、少佐が言う「ネットは広大だわ」そのまま、読んでない本がありすぎで、実感が湧かないのかも。

 しかし、人工知能とかに「あなたの好きそうな本はこれ」とかお勧めされたくはないな。絶対に。

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