第182話 年寄りになったと実感した
これは僕自身の「老化」の話。
何年か前のことですが、たまたま知り合いとの世間話の中で「老人は昔の話ばかりする」という指摘があった。その時は自然と聞き流していたけど、なるほど、家族の年寄りを見ていると、テレビを見ながら「昔、行ったことがある」ということを毎日のように言うし、ベテランの役者が出ると、やはり勝手に過去のことを喋り始める。
そんな感じで、あの指摘は正しかったのか、と実証された。
さて、実は僕はここのところ、たまたま知った声優さんのラジオ番組を聴いていて、その声優さんがなんと、十六歳です。まだまだトークがあどけないというか、ぎこちないというか、洗練とは程遠い拙さで、まぁ、それが面白いと思って聞きながら、メールを送ってます。
ただ、ふと気づくと僕が送るメールは、大半が僕自身が過去に体験した話で、つまり「昔話」になっている。これには自分で自分に驚いてしまった。
これこそが老人が昔話をしたがるメカニズムなのでは。
若者の知らないことを口にしたくなってしまうとは、かなりみっともないと実感したので、最近はメールを書く時、意図的に現在進行形のことに絞って書くようにしています。
不思議なのは、他のラジオにメールする時には過去を振り返ることはないのですが、何故か、このリアル高校生の番組には、年寄りじみたメールをしてしまう。
この原因にに挙げられそうな要素は、「現在進行形がわからない」というところかもしれない。その声優さんのラジオ番組を聴いていると、頻繁にスターバックスコーヒーの話が出てきて、本来的には僕はそこへ突っ込んでメールしたいところなんですが、身近に店舗がないし、利用したこともないし、どんな感じか何も知らないし、つまり、ネタが生まれてこない。他にも、今の高校生が読んでいる漫画は何か、小説は何か、流行ってるドラマは何か、TikTokで何がバズってるのか、面白いお笑い芸人は誰か、そんなありとあらゆるジャンルの「高校生のスタンダード」がわからない。だから、「今」ではなく「僕の過去」からネタを引っ張ってしまう。いやはや、こうして老人化していくんですね……。
これは最近、如実に感じますが、僕が聞いているラジオ番組だと、花澤香菜さんをこれこれ七年くらい、ラジオで追いかけてますけど、その間でいきなり花澤香菜さんが大人になった、雰囲気が変わった、ということがなくて、ずっと若いままなんですよね。他にも丹下桜さんも長く追ってますけど、年齢不詳というか、若々しい話し方をする。で、僕はといえば、ラジオにメールする内容は十年くらい、あまり変化しない。気がする。
どうやら人間は自分が身を置いている環境で、精神的年齢、あるいは加齢の程度が変わるらしいと思えてくる。だから小学校とか中学校、高校の教師なんかは、あるいは感性というか、感覚が若いままなのでは。逆に老人ホームで働くと、どうなるのか。いや、それはそれで、対比して「目の前にいるのは老人で、自分自身は若い」と認識するのかな。
しかしそれにしても、十六歳に響くメールの内容とは、いったいなんなんだろう? うーん……。
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