第145話 名刺がわりの小説10選

 1「笑わない数学者」森博嗣

 2「1973年のピンボール」村上春樹

 3「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」桜庭一樹

 4「百年の孤独」ガルシア・マルケス

 5「虐殺器官」伊藤計劃

 6「水滸伝」北方謙三

 7「額田女王」井上靖

 8「機龍警察」月村了衛

 9「鬼平犯科帳」池波正太郎

 10「折れた竜骨」米澤穂信




「笑わない数学者」

 森博嗣さんのS&Mシリーズの三作目で、森博嗣さんの中の一番の一冊を挙げるとなると、かなり困難ですが、一番好きな「笑わない数学者」を選んでます。

 叙述トリックの技巧も好きですが、天王寺博士との問答も好き。犀川先生と西之園くんが初々しいのも今では和む。



「1973年のピンボール」

 これもやはり、選ぶのが難しい村上春樹さんの作品の中での一冊で、四部作の二作目ですが、この作品はかなり謎。意味がわからなくて、観念的なんですけど、どこかストーリーがスマートで好きですね。

 配電盤を池に投げ込むシーン、巨大な空間に無数のピンボールマシンが並んでいて、一斉に稼働し始めるシーン、お気に入りです。




「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」

 これはライトノベル10選に入れるべきなんですが、こちらにしました。ライトノベルではないというか、ミステリでありながら、実際には「人間の心」みたいなものが主題で、悲劇なんだけど、ただの悲劇で片付けるのが難しいものが描かれている。

 こんな絶望が……、と、何度読んでも、胸が締め付けられる。



「百年の孤独」

 この小説は、どうやったら書けるのか、という問題の前、どうやったら構想できるのか、そこからが分からない傑作。全てが複雑に絡み合って、マジックリアリズムの極致が出現して、本当に訳がわからない。

 何回か読んでますが、これは素晴らしい一冊。

 何故か僕は三冊持ってます(?)



「虐殺器官」

 これは僕がSFに気づいたきっかけなので、選びました。

 まったくの私感ですが、ゼロ年代に伊藤計劃さんが存在したことによって、ちょっと歴史が変わった気がします。SFというものが再認識されたというか。



「水滸伝」

 僕はだいぶ遅れてこのシリーズ(北方水滸伝)に取り掛かったのですが、そもそも「水滸伝」についての知識がなく、最初に読んだ時は、「何でこの人たちはやたらとあだ名をつけたがるんだ?」と思ってました。しかし読み進めると、あだ名もなかなか面白い。

 この作品で好きな場面は、林冲が楊令を抱きしめるシーン。これは心打たれる。




「額田女王」

 この小説の存在は新海誠監督のアニメ「言の葉の庭」で知りました。はるか昔の、中大兄と大海人の兄弟のことは知ってましたが、この小説ではだいぶドラマチックになっていて、創作とはいえ、作品の雰囲気が何とも言えず優雅で、優美で、古風で、他にない感じです。





「機龍警察」

 これは実に面白い経緯をたどりつつあるSFとして、2021年の感覚として挙げました。

 作中では数年、あるいは十年先の未来を描いていたはずが、シリーズが続くうちに、作中の架空の世界と、現実の世界が不自然に入り組み始めて、この先、どうなるのか。

 現実世界で、作中のSFらしい科学技術は、現実では、あり得ないか、成立するとしてももっとずっと先ですが、「機龍警察」の世界観は、なんというか、変にリアルで、心躍るフィクションでもあって、良い。




「鬼平犯科帳」

 僕が時代小説を読んだきっかけは、まったくの気まぐれで「剣客商売」を読んだからなのですが、「鬼平犯科帳」の方がお気に入りです。

 火付盗賊改方の長谷川平蔵はもちろん、かなり多くの登場人物がいながら、ちゃんと個性があるし、もちろん見せ場もあるし、とにかく作品世界、江戸の街が、人物を通して立ち上がってくるのが素晴らしい。



「折れた竜骨」

 この作品はミステリとしてユニークなので選びました。米澤穂信さんは比較的、読みましたが、この作品のトリック、仕掛けはなかなか面白い。ファンタジーが好きな人も唸らせる世界観です。

 米澤穂信さんは「古典部」シリーズ、「小市民」シリーズなども良い。

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