第137話 創作の設定と、超難問「オリハルコン矛盾」
たまたま見た「創作の設定」における話についての所感が、今回の話。今回の最後に僕が勝手に提起する「オリハルコン矛盾」の検証が突如、始まります。
例えば「剣」と「刀」は何が違うのだろう? ということを、あまり真剣に考えないし、考えても仕方ない、という側面が確かにあると思う。作品世界で「剣」と「刀」、その二つが何故、並存しているか、を説明するかどうかは、必要とも言えるし、不必要とも言える。全くの異世界なら、自在に設定できるので、おそらく説明する必要はない。
この問題をどこまで考えるか、を突き詰めると、訳が分からなくなる。例えば、刀を打つ技術が発生して発展した経緯とか、刀を打つのに必要な鉄などをいかにして精錬したか、発見したか、細かいところだと構造としての刀の反りの理由とかも、問題になってしまう。これはつまり、刀に限定されない問題で、例を挙げると、肉を食べる時にどうするか、を、あなたはどう解釈しますか? 焼く、煮る、蒸す、その辺りは自然でも、揚げる、というのはどうなるのか。その作品世界では油が多く出回っている、という補足が必要になるけど、では、その油は胡麻からなのか、それとも菜種からなのか、とか、そこまで設定しないといけないのか? 主食もそうで、麦を食べるのが普通なのか、米を食べるのが普通なのか、それも設定しないといけないのか。
つまり、異世界ファンタジーにおける、細かな設定に必要なのは「細部」ではなくて、読者がすんなりと受け入れられるか、という部分にだけあるのではないか。
この異世界に現実を当てはめる方向ではなくて、現実における当たり前を異世界に押し付けようとする試みは、あまりなされない。よくある身体能力の強化は、おそらく筋力、膂力のようなものを底上げしているけど、仮に筋力が倍になって、普段通りに走ろうとするとどうなるのか。地面を蹴る力が強いと、普段通りには走れないはずだけど、ここを突き詰める人はいない。何故だろう? 膂力を底上げした時、服は破けたりしないのか、靴は砕けないのか。それよりも武器を扱った時、剣術などの技が崩れるのではないか。膂力が底上げされた剣術が発展するのだろうか。武器に関して考え始めると、この驚異的な力が発揮される時、普通の武器だと破損するとなったら、自然と頑丈に作るけど、それだと通常時に扱えない。軽量で頑丈な武器、という設定でこの辺りの細かないちゃもんは回避できる、というところに読者による「理解」の片鱗が見えますね。
それにしても、よくある、「オリハルコンの剣」って、どうやって整備するんだろう? 絶対に砕けないという物体の刃を研ぐことはできないはずで、つまりオリハルコンの剣は研ぐ必要がない。しかし研げないとなると、最初に成型したままで使ってるわけで、成型時に切れ味が出るようにしているのか? ここまで来ると、オリハルコンは剣の形には出来る以上、普通の金属のように考えると、超高熱で液体にして成型した、としたいところだけど、それではオリハルコンの剣は超超高熱で破壊可能なので、矛盾が生じる。
ここで答えが出ました。ファンタジーにおける超難題「オリハルコン矛盾」は、異世界らしい、正体不明の力で成型した、ということになります。物理的な力ではないし、熱でもない。あれ? 今回の議題、問題は、設定の穴をつついてどうなるか、だったはずが、「異世界ファンタジーのお約束」に関する問題に近いらしい。創作の中では全てが許されるはずなのに、許されないところを探しているのは、やや不自然ではないかな、と個人的には感じます。
創作の中は創作の世界で、そういうものだ! で僕はなんでも許せるけど、そんないい加減な読み方をする人は少数派なのかな。
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